調査ってこんなに楽しいものでしたっけ

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お決まりの終わりの挨拶をしてから少し経つが、いまだに配信自体が終了しない…。視聴中の人数は先程に比べて減りはしたが、まだ多くの人が残っている。
　いつのまにかBGMも聞こえなくなり、コメント欄だけが動いている現状だ。流石にまずいのでは…とリスナー各位が思い始めたとき、声が入った。

「おつかれ。」

　長尾さんの声だ。その声がかけられる相手は同じ場所にいる1人しかいないだろう。

『そっちもお疲れ様。』

　明らかに配信時とは違う柔らかな声。これ完全にオフじゃないか、リスナーはAさんの声を聞いて全会一致でそう感じ取った。


-声はいった？！？
-大丈夫なんかこれ…？
-切れてないよーー！！


「賭けてたコーヒー豆のやつ、淹れてきた。」


-配信続いてるよ！！！
-既にあったんかいな豆
-きづけーー！！
-これ聞いて大丈夫のやつ？


　コメントに気づくことなく平然と交わされる兄妹の会話。いや、こらはこれでなんか良いんだけどさ…！



『ありがと、兄さ、









　 あはは……、そんな怖い顔しないでよ、』



Aさんの小さく掠れた笑い声の後に続けられた言葉。長尾さんが怖い顔？今のやり取りの内になんかあったのか…？画面越しに聞こえる音しか情報がない自分たちには頭にハテナが浮かんだ。これもまたリスナー全会一致だと思う。



「お姉ちゃん、おれは"あの人"じゃないかんね」



　怖い顔をしているはずの長尾さんの声は決して怒っているようなものではなかった。逆に弱々しい、そんな声だった。



『…わかってるよ、そのくらい

　 ………ごめんね、景』



「それは何に対する謝罪よ？」
『いろいろ、全部ひっくるめて。』
「もう謝るのは聞き飽きたって」
『そう言われてもな…』


「…そんな似てる？おれ、」

『…………』

「だからって勝手に重ねんなよぉ？
　俺は景。それ以外のなんでもない。」

『…お見通しな訳か。
　…だから執拗に"お兄ちゃん"呼びさせようとした？』

「…さぁな？」



『……重ねてたから大切なんじゃない、
　私は、景だから大切なの。
　それだけは、それだけは信じて、お願い。』




「そんなん言われなくてもわかってるって、
　ほらコーヒー冷めるぞぉ。」






長尾さんのそんな言葉を最後に配信は切れた。

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