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(福良side)
「あ、休憩中の話聞こえてたの？」
「ごめん、立ち聞きするつもりは無かったんだけどさ。聞こえてきたから、気になって。」
「うーん、河村さんもお弁当欲しいなら良いかなって」
三人分も作ってるのに大変じゃない？作って貰ってる人間が言うことじゃないけど…
しかも、俺以外の人間にAがお弁当作るなんて。嫌すぎる。折角お弁当箱だってお揃いにしたのに。Aと俺だけだったのに。そこに誰かが入ってくるなんて。
思わず握っていたAの腕に込める力が強くなってしまい、Aの顔が歪んだ。その顔を見て、Aの腕から手を離した。
「どうしたの？拳くん、さっきから黙っちゃって」
「……何でもない。気をつけて帰ってね」
「うん…ありがとう。お先に失礼するね」
「お疲れ様」
少しだけ、気まずい空気が流れた。Aは気にしていないように見えたけど…いや、そういう風に見せてるだけだ。
「……はぁ」
「福良にしては随分回りくどいアピールだね」
「…どういう事？」
「Aさんにはさ、そんなアピール効果ないと思うけど？」
「じゃあどうしろって？」
「さあね？後ろから襲いかかってみれば良いんじゃない？」
適当なことを言う河村にイラッとしてしまう。そんな俺の気配を感じとったのか逃げるように河村は部屋から出ていく。何が言いたいんだ…
自分だって分かってるよ、このままでいたって幼馴染の域から脱しないのは。けど、じゃあどうしたらいいんだ。自分の気持ちを一方的に押し付けて、相手を傷付けるのを何とも思わないほど落ちぶれてもいない。
「Aに何一つ響いていない事なんて…俺が一番よく知ってるよ…」
.
翌日、昨日の事をAに謝ろうとAを探すもどこにも見当たらない。いつも俺より先に出勤してるのにな？山森に尋ねると予想だにしない答えが返ってきた。
「Aちゃんなら今日お休みですよ？」
「休み？予定だったっけ？」
「いえ、体調不良みたいです」
体調不良…昨日から体調が悪かったのだろうか？そんな素振り全く無かった……いや、Aはそういうのを周りに気づかせないようにするのが得意だった。
「電話がかかってきて出てみたら結構なかすれ声で。LINEで休むって連絡くれたら良かったのに…」
「山森、無理言うけどAの所までお見舞い行ってきてくれない？」
「え、私がですか？」
「一人暮らしの、しかも風邪で弱っている女の子の家に男の俺が行くわけにいかないじゃん」
.
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作者名：ひなた | 作成日時：2021年9月19日 10時
