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拳くんとお弁当箱を買いに行って数日。約束通り拳くんは私が作ったお弁当を野菜のおかずも残さず食べている。このまま野菜嫌いがなくなればなぁ。
「いやはや、Aさんの力は絶大ですね。動画の企画ですらあんなに嫌がって野菜を食べたがらなかった福良がああも進んで食べているとは。」
「河村さん！河村さんもお昼休憩ですか？」
「丁度作業にキリがついたのでね。今日のお弁当のおかずは何ですか？」
「今日はさつまいものきんぴら、蓮根つくねの照り焼き、キノコのソテーです！」
「うん、どれも福良が嫌がりそうなおかずですね」
「ちょっと河村さん、その言い方私が拳くんを虐めているみたいじゃないですか！」
「それは、ごめんなさい」
謝られているはずなのに何だか楽しそうにしている河村さん。何故なのか。
けど、拳くんが毎日残さず綺麗に食べてくれるのが私はとても嬉しい。手の抜いたおかずは入れられないと私の料理力もアップしているから一石二鳥だ。
「今度僕にもお弁当作ってきてくださいよ」
ニコッと笑顔でそう話してきた河村さんに、「是非！」と返事をしようとしたところで、
「河村ー休憩中ごめんー、ちょっといい？」
「あぁ、うん。じゃあね、Aさん」
「あ…はい。」
ガチャッと開いた扉から出てきた拳くんに呼ばれた河村さん。返事をする事が叶わなかった。
……うーんと、どうしたらいいんだろう？作ってきてあげた方が良いのかな？
「ま、また今度聞けばいっか」
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「A今日も美味しかったよ、ご馳走様」
「わ！今日も完食！嬉しい！」
「当たり前だよ。作って貰っておいて残す事なんて出来ないよ」
「でも、お野菜あんなに嫌いだったのによく食べれるようになったね？」
「いや…味は美味しいけど、まだ進んで食べたい境地までには至ってないかな…美味しいんだけどね！」
「あはは、それでも口にしてくれるだけで嬉しいよ。じゃあまた明日も楽しみにしててね！」
拳くんの野菜嫌い克服出来たかと思ったけど流石に25年以上野菜を退けてきた人が普通に食べられるようになるは時間がかかるみたい。
貰ったお弁当箱を鞄にしまい、帰り支度を済ませようとすると徐に拳くんの手が私の腕を掴んだ。何も言ってこない拳くんを不思議に思って拳くんの顔を覗き込むようにして伺うと、少しだけ…ほんの少しだけ不機嫌そうに眉間に皺を寄せている拳くんと目が合った。
「…河村にも、お弁当作るの？」
「え…？」
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作者名：ひなた | 作成日時：2021年9月19日 10時
