何かに縋っていたいのだ ページ33
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「福良さん。恵比寿さんが辞めたのは福良さんのせいじゃないですって。僕も、なんで辞めちゃったのか…分からないけど。きっと彼女なりの理由があるはずです。それは、福良さんのせいじゃない」
「……だと、良いんだけどね」
祥彰の言う通りだと思った。私はそんなに関わりがあった訳じゃないけど、私から恵比寿さんを見ていても彼女はQuizKnockでの活動を本当に楽しんでいたと思うし、何か辞めなければいけない理由が出来てしまったんだろうと思った。
祥彰も辛いんだろうな…恵比寿さんとはこうちゃん含めて特に仲のいいトリオだったし。
「もー、折角Aちゃん戻ってきてくれたんだからそんな辛気臭い顔は辞めて!前を向いていこう!」
「伊沢さん…」
「最近色んなことが起こってちょっとみんな疲れ気味だからさ、Aちゃんの復帰祝いも兼ねて今日はみんなで飲みに行こう!よし、そうしよう!社長命令だ!みんな今日は定時までに仕事終わらせろよ!」
「ちょ、そんな無茶言わんで下さいよ!」
「ウルセーウルセー、さっさと手ェ動かせ!」
突然の社長命令に、あたふたしているこうちゃんを見てると、あぁ。私、この場所好きだなぁ。この雰囲気が好きだなぁ。…心が温まるようだった。
恵比寿さんが突然辞めてしまったことは、衝撃的だし少し寂しいけど…きっと時間が傷を癒してくれるだろう───
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「元気だった?Aさん」
「あ、三守さん!」
無事仕事を終わらせられたメンバーで行きつけの居酒屋で、お酒と美味しい料理を囲む。たまたまオフィスに来ていた三守さんも飲み会に参加していたみたいで、この日久しぶりに私たちは会話を交わしていた。
「もう体調は大丈夫?」
「はい、すっかり…元気になりました」
「本当?なんか含ませた間があったけど」
「あはは…」
身体の方はすっかり元気。だけど、心まで元気になったかと尋ねられればそれは微妙なところだ。
「……そういえば、三守さんって大学では医学部でしたよね?」
「うん、そうだよ」
「ちょっと、変なこと聞いていいですか?」
「うん?」
お医者さんの卵…三守さんなら、もしかしたら分かるのかな。記憶を取り戻す方法……
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月29日 19時