私の記憶の中微笑む君 ページ21
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───わたしおおきくなったらねー、 ____になるの!
───じゃあぼくはー……
2人の園児が地面に木の棒で絵を描きながら、屈託ない笑顔で話をする画が見えてきた。
これは……久しぶりに、幼稚園の頃の夢だ。この隣に居る子は…恐らく幼稚園児の拳くん。
大人になって再会した拳くんは、幼稚園の頃と比べると、当たり前だけど随分と大きくなって背丈も逞しく成長していた。だけど、この柔らかい笑顔は昔から変わってないんだなぁ。眼鏡をかけていないから余計にふにゃ、とした笑顔が眩しく映る。
───おひっこししても、またあおうね!やくそくだよ!
───うん!ゆびきりげんまん!うそついたら…にんじん100ぽんたべまーす!ゆびきった!
───えー!にんじんやだー!!
そういえば、年長で香川に引越ししてたんだっけ。ほんの僅かしか関わりのなかった私たちは、僅かな時間ながらとても濃い時間を過ごしていたみたい。針千本じゃなくて人参にするところがなんとも面白い発想だ。
「……また、こんな時間に目が覚めちゃった」
不意に瞼が開き、夢はそこで途切れてしまった。決まっていつも4時。今日はいつものようにまた昔の夢だったけど、夢の中では初めて見る光景だった。
それにしても、こんなにも仲良く遊んでいたのに全く幼稚園の頃の記憶が無くなるなんてこと有るのかな…夢を見ては、そういえばこんな事あったな。なんて思い出すのだ。毎回
「とりあえず水飲んで、もっかい寝てみよ」
いつもはそのまま起きているのだが、もしかしたら夢の続きが見れるかもしれない。再びベッドに潜り込んで瞼を閉じてみると案外すんなりと眠りにつけたのだった。
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───東京の大学に行こうと思って
───……じゃあ私も東京行く!
───Aちゃん、そんなに頭良かったっけ?
───けんくんが良すぎるだけで、これでも私学年でトップクラスの成績なんだよ!
幼稚園の頃の夢の続きかと思いきや……、見ている夢に出てきたのは随分と大きくなった私と……例の『けんくん』だった。
そういえば、この『けんくん』って誰なんだろう。拳くんと同じ名前だから気になっていたのに、気付いたら忘れていてこの夢で思い出した。
───まさか東京まで追いかけてくるなんて
───逃げられると思ったら大間違いよ!
───逃げてるつもりなんて、更々無いけどね
その時いつも逆光で見えなかった『けんくん』の顔が少しだけ見えて……その顔は、『拳くん』にそっくりだった。
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月29日 19時