【QK】貴方の言葉は花となる【ymmt】[完結]

コケモモの声援 ページ38

【コケモモ】挫けるな


苦しい、辛い、怖い。
こんなにも人の目が怖くなることなんて、今まで無かった。こんなにも、人肌恋しくなることがあるなんて、無かった。寒い冬も風邪をひいたあの日も。


世間の風当たりが強くなって、すっかり萎縮してしまった私に対して事務所も腫れ物を触るような対応へとなってしまった。
今まで仲が良かった同じ事務所の先輩も同僚も後輩も、どこかよそよそしく他人行儀。

そんな私に対して変わらない対応をしてくれたのが、ちかだけだった。彼女はいつでも私の味方で居てくれた。今までも辛い時、悲しい時はいつまでも相談、愚痴を聞いてくれた。

だが、今回ばかりはそんなちかにも少し甘えすぎたようだった。




『今のあんた、正直嫌い』


いつものように、電話でめそめそとちかに長電話をしていると盛大なため息をついたあとそう言い放ったのだ。

まるで、後ろからトンカチで殴られたかのような痛みが心に襲った。唯一の味方、親友だと思っていたちかにそんな言われ方をするなんて…もともと口が悪いところはあったが、ここまで正直に言われたのは初めてだった。


『何が、ピオニーよ。何が芍薬のように、よ』

『今のあんた、最悪だよ。どの口が相手に素直になって欲しいって歌ってんのよ』


ただ、嫌いと言われただけでなくしっかり理由も打ち明けられて。それはそれは、心が抉られる思いで思わず電話を切ろうとした。が───


『私の知ってるAは、そんなやつじゃないよ。今までだって、後ろ指さされたとしても堂々と凛々しい花を咲かせてたじゃない。立派な花を…なのに、今のあんたは中途半端だよ』

『QuizKnockから離れたこと…、山本くんの前から姿を消したこと…決めたのはあんたでしょ？いつまでくよくよしてるのよ』


……電話口の向こうのちかの声が、少し震えているような、そんな気がした。怒りで震えている…というよりは、泣いているような……


『そんなに後悔するなら、やり直せばいいじゃない。立ち向かいなさいよ！スキャンダルが何よ。プライベートが充実してなくちゃ、芸能生活なんて輝くわけないじゃない』

「ちか……っ」


泣き声と、鼻をすする音が聞こえた。私の事を思って泣いてくれているのが、言葉から伝わって私も思わず涙が溢れた。


『山本くんとの事も…、ピオニーも…中途半端なんて絶対良くない。プロなら、どっちも完璧に、こなしてみなよ…！』


その一言で、一気に気持ちが切り替わった。

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