【QK】貴方の言葉は花となる【ymmt】[完結]

ミヤコワスレを準備しよう ページ29

【ミヤコワスレ】別れ


「最悪だ……」


変な男性2人組に追われて、思いがけず祥彰くんに助けられたあの日から数日が経った頃。あの日、帰り道で落としたのだろうか…その日バッグに入れていたはずのハンカチが無くなっているのに、今更気付いた。


「流石に今探しに行っても見つからないだろうし…またあの変な人たちが居たら面倒くさいから諦めよう…」


結構お気に入りだったのにな…
落ち込んでても仕方ない、そろそろ買い換えなさいという神のお達しだろう。

気持ちを切り替えて、代わりのハンカチをバッグに入れたら、玄関を出て向かうは、QuizKnockのオフィス。

最近はピオニーの方が忙しくて、あまりQuizKnockにも大学にも顔を出せていない。一応伊沢さんには一言伝えておいたが、この前20曲を作ったお陰で暫くは記事も何も書かなくてもいいくらいの仕事量だったみたい。


「おはようございますー！」

「あっ！Aちゃん！久しぶりだね！」

「言っても2週間だよ？」

「前はもっとオフィスにも来てたし、大学でも会えてたじゃん！」


執務室に顔を出せば一番に声を掛けてきてくれたのは、祥彰くん。何だか嬉しそうな表情に、ハンカチの事なんて頭から吹っ飛んでいってしまったみたいに、私も釣られて嬉しくなる。


「おはよーAさん。Aさん来ない間、ずーっと山本が、Aちゃんに会いたいー会いたいーってうるさかったんだから」

「えっ…？！」

「ちょっと河村さんっ！」


レンズ越しに少し細められた瞳と、ニヤッと口角が上がる少し意地悪そうに笑う河村さんに、思わずドキッとする。

……いや、そうじゃない。きっと、このドキドキは祥彰くんが私に会いたがっていたという事実を聞いたからだ。


「も〜！ごめんね！河村さん変な事言っちゃって」

「う、ううん。平気だよ、私も祥彰くんに会いたかった」


…しまった。ついポロッと本音が漏れてしまった。溢れた言葉を取り戻すにはどうしたら…なんて言えばいいんだろう…ええと……


「……今日も、Aちゃん来ないかなぁって待ってたから。会えて嬉しいな」

「……私も」


恥ずかしいけど、会いたがっていたのは私だけじゃなかった。その事が嬉しくて、つい2人で笑いあった。



ブブブッ…


「あ、ごめん。電話だ」


マネージャーからだ…オフの時は余程のことがない限りほぼメールで済ますのに…
少し不審に思いながら電話に出ると思いもよらない一言が受話器の向こうから飛び出してきた。


『A…貴方、週刊誌に撮られてるわよ…？』

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