こんな出会いも悪くない / sgi ページ21
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「…もうこれで今年5枚目の招待状だよー」
今年まだ半年しか経っていないのに。
机の上にある、友人からの結婚式の招待状に向かって少しばかりの小言が溢れた。いや、友人が結婚する事への不満は一切ない。とてもおめでたい事ではある。のだが…
「Aさん最近ラッシュですね」
「こうちゃんとこには…まだ来ないよねぇ」
「そうですねぇ…」
流石にこうも立て続けに友人たちが結婚へと進んでいくのを見ているとさすがの私も焦らずにはいられない。
隣に座るこうちゃんはまだ大学卒業して、そんなに経ってないし流石に男の人だともう少し結婚は遅くてもいいのかもしれない。
「はー、私にも王子様現れないかなー」
「その年になってまだ王子様とか言っちゃってるあたり、一生現れませんよ」
「…辛辣こうちゃん、つらい」
大袈裟な嘘泣きをしながら出席に丸をつける。同封された式場のチラシを捲れば、なんとも素敵なチャペルと披露宴会場が写っていた。
「おっすおっすー」
「あ、須貝さん。こんにちは」
「あら、Aちゃんどーしたの」
「友人からの結婚式の招待状で嘆いてるみたいですよ」
「まーた?!あなた今月3枚目じゃないの?!」
「う、うるせぃ…」
元気よく執務室へやってきた須貝さん。QuizKnockメンバーで比較的年上な私より唯一年上の須貝駿貴さん。そんなナイスガイが私の傷口を抉るだけでなく塩まで塗りたくってくる。
出席に丸をつけたハガキを手に取って、へぇ。なんてよく分からない感想を、零す須貝さん。
なによ、へぇ。って、素敵な式場だなって見てんの?
「あーあ、結婚式で運命の出会いないかなぁ」
「…と言いますと?」
「新郎側の友人とかで良い人居ないかなぁって…」
そんな変な事言ってないはずなのに何故かこうちゃんに引かれた。まだ結婚式行ったことないアンタにはどうせ分からないわよ……
「ふーん。良いんじゃないの?運命の出会い」
「へ?」
そんなこうちゃんとは反して私の考えに賛同してくれるは、流石ナイスガイ。友人の結婚式に多数参加しているだけあって私の同朋だ。
そんなナイスガイさんがニヤニヤしながら、何やらカバンをガサガサ漁って1通の封筒を取り出した。…あれ、その封筒見覚えあるぞ。
「俺とさ、運命の出会いしちゃう?」
「んなっ…!」
封筒から出された、1枚の結婚式の招待状に私とこうちゃんは驚いて声も出なかった。
須貝さんと運命の出会い…悪くないかもしれない。
雨が僕らをくっつける / ymmt→←俺にしときな? / kochan
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年5月29日 14時