俺にしときな? / kochan ページ20
.
オフィスで動画の撮影準備をしていると、彼女はやってきた。Aさんだ。
俺の2つ上で、伊沢さんの後輩。クイズは未経験だが、頭のキレの良さから伊沢さんにスカウトされこのQuizKnockにやってきた。
「おっはよー、Aちゃ…」
福良さんがAさんにいつものように挨拶するも、その声は最後まで発せられることなく萎んでいく。それもそのはず、彼女はこれでもかと言うほど、落ち込んだ表情をしているからだ。
そして、瞬時にAさんに何が起きたのかを察した。何故ならば、この表情を俺達は何度か見たことがあったからだ。
「こうちゃん…よろしく」
「はぁ…、分かりましたよ」
……これで、何回目だろうか。Aさんが失恋するのは。デスクの角を占領している時は、決まって失恋した時だ。椅子の上で体操座りで小さく丸くなり頭以外はブランケットで覆われている。困った顔をする福良さんを横目に俺は小さくため息を漏らしながらAさんの元へ向かった。
「また振られたんですか?」
「…うるさい」
顔は見えないが、恐らく泣いている。Aさんがこのオフィスで泣くのも一度や二度なんてもんじゃない。きっと数え切れないくらい。
「まーた泣いてるんですか?慰める俺の身にもなってくださいよ」
「別に頼んでないし」
そんなAさんの言葉は無視して俺はAさんの隣の椅子に座り込んだ。まだ、彼女は体操座りのままだ。
「…で、今回はなんて言われたんです?」
「…友達にしか、思えないって…」
この台詞も何回聞いただろうか。いつも、Aさんが振られるのは決まってこうだ。『友達にしか思えない』
果たして、彼女のどこに女性としての魅力を感じない部分があるだろうか。俺だったら、友達には思えないっていってしまいそうなくらいにはAさんは魅力的なのだが。
「裏を返せば友達としては最高の仲って事じゃないですか」
「でも、私はその人とその先まで進みたいって思ってるのに…っ」
そして、俺が失恋するのも数しれず。まぁ、俺の場合はAさんに気持ちをすら伝えてないから勝手に振られたことにしてるだけなんだけど。
「もう、放っておいてよ…!今はひとりで泣きたいの!」
「だったら誰も目につかない所で泣けばいいでしょ?そうしないのは誰かに慰めて欲しいからだって、俺知ってるんですからね。」
そして、その特権は俺の手の中に。貴方が好きだからですよ、Aさん。いつになったら気持ち伝わるんかなー
(少し改変しました)
こんな出会いも悪くない / sgi→←ねぇ愛は足りてる? / kwmr
245人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年5月29日 14時