【QK】胡蝶蘭 / 短編集 (ページ19)

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ねぇ愛は足りてる？ / kwmr ページ19

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今、非常にイライラしている。
その理由は、付き合っている彼女が原因だ。

「ナイスガイさーん！ここの物理が分からんですー！」

「東大生ならねぇ、何でもかんでも人に聞かずに自分で考えて答え導きなさい！」

「じゃあ、ふくらっぴ～理系でしょ～教えて～」

「忙しいからパス」

あそこで繰り広げられている会話を聞く俺は今にも怒りが爆発してしまいそうな。だけど、そんなキャラでもないので心穏やかに何事もないかのように今は過ごす。……今はね。

「てか、河村に教えてもらえば良いじゃん！あんたら付き合ってんでしょ？」

「だって、拓哉は意地悪だから簡単に教えてくれないんだもーん」

おい、聞こえてるぞ。イヤホンを付けているが片耳だけだから全て聞こえてるぞ。
チラリとAの方に視線を送れば、俺の気持ちを知っているのか、はたまたからかわれているのか、にっこりと笑いかけられる。

「いいよ、教えてあげるよ」

「えっ、ちょっ…」

付けていたイヤホンを外しAの元へ向かえば何故か身構える彼女。どうした？教えて欲しいんだろ？直々に出向いてやったぞ。

「で？どこが分かんないの？」

「……怒ってる？」

「怒ってないから早く見せなさい」

「お、怒ってるじゃんかぁ…！」

半べそ状態のAは放っておいて、付箋の貼られたページをペラペラ捲る。すると1枚のメモがはらりと舞落ちた。

「何コレ」

「あっ！！ダメ！！」

取り返しに手を伸ばすAからひょいと逃げ切ってメモを表に向けるとそこには────

『拓哉がカッコよすぎて心臓がもちそうにありません。本当に私なんかが彼女で良いんですかね？』

「…何コレ」

「あは、あはは」

彼女の不安を書き綴った文章が1つでは無い。2つ、3つと書かれている。なるほど、須貝さんや福良はそれでAに俺のとこへ行けと仕向けてたのか。

「こんなメモ用紙に書かなくても直接言いにこれば良いじゃん」

「や、だって……恥ずかしい…」

先程までの威勢の良さはどこへ行ったのか。どんどん縮こまるA。素直じゃないなぁ、全く。

「はいはい、恥ずかしいなら恥ずかしくなくなるまでいっぱい愛してあげますよー」

「な、何言って…？！」

「ふくらーちょっと外出てくるわー」

「はいはい」

彼女に選択肢は与えない。今から俺がとことん愛してやるから覚悟しやがれ。