2.ハムサンド ページ4
くすりと笑いながらハムサンドを提供してくれた彼に礼を言い、空腹を少しでも早く無くすために急いで一口ほおばる。
シャキッとしたレタス、オリーブオイルとマヨネーズの香り。
いや、きっとこれはマヨネーズだけじゃない。西洋の食べ物なのに、このサンドイッチはどこか和風な味がした。
もくもく。もぐ。はむ。
Aはあまりの美味しさに目を輝かせ、黙々と食べ続ける。
食べやすいサイズに切られた三角のサンドイッチの一切れは、あっという間になくなった。
箸休めに付け合せのポテトチップスをつまみ、オレンジジュースを流し込む。うん、美味い。
そもそも、ポテチとオレンジジュースが合わないわけが無いのだ。
「…」
次いでふたつめを手に取ったAの姿に、心を奪われている男。
その名も───安室透。
「…お味はいかがですか?」
彼女があまりにも美味しそうに食べるから、安室は気になってAに直接問いかけてみた。
「!…!!」
「あ、すみません!食べ終わってから教えてください!」
…うんうんと力強く頷くAの頬は、サンドイッチでパンパンだった。
ごくんと嚥下したAは、オレンジジュースを一口煽ったあと、安室と視線を交わらせた。
「すっごく美味しいです。初めて食べました、こんな美味しいハムサンド…!」
このとき安室は無意識に、目をキラキラさせて最後のサンドイッチをほおばるAに見惚れていた。
付け合せまで残さず完食したAは、会計を済ませ、店の扉を開けた。
ドアベルがカランカランと鳴る。
店を出ていくために背を向けた彼女に、なぜか寂しさを覚えた安室は、咄嗟にこう告げた。
「また、来てくださいね。」
「…!はい、また来ます。」
彼らの運命は、ここから変わり出すのだった。
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作者名:ンョョ | 作者ホームページ:https://odaibako.net/u/DhbwLy
作成日時:2023年4月8日 2時