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1.喫茶ポアロ ページ3

カランカラン、と店のドアベルが鳴る。
鼻腔をくすぐるコーヒーの匂い。
心地の良いBGM。

カウンターキッチンの中には、男女の店員が立っている。
何気に、昴さん以外の男性を見るのは久々かもしれない。

「いらっしゃいませ!」

そのふたりに挨拶され、Aは軽い会釈を返した。

「おひとりさまでしょうか?カウンター席へどうぞ!」

男性に案内されるがまま、Aはカウンター席に座った。
使い込まれてはいるものの、古臭さを感じない調度品。
机も綺麗に清掃されていて、汚れはひとつも目立たなかった。

男の店員がおしぼりとお水を運んできて、Aのテーブルへ置いた。

「ご注文がお決まりになられたらいつでも呼んでくださいね。」

「はい、ありがとうございます。」

メニュー表とにらめっこすること早五分。
Aは何を食べようか迷っていた。
パンケーキも良いし、季節のケーキも良い。けれど、マカロニグラタンも捨て難いのだ。

「すみません。」

ついに決められず、濡れたお皿を拭いている男性店員に声をかける。綺麗な金髪だ。ハーフなのだろうか。

「お伺いします。」

「あの…オススメってありますか?」

その男性店員は、何を食べるか迷っていたAを先程から眺めていたのだろう。
爽やかな微笑みを浮かべ、メニュー表にある“ハムサンド”を指差した。

「それなら、ハムサンドはいかがです?僕のお手製なんですよ。」

「じゃあ、それひとつ。飲み物はオレンジジュースでお願いします。」

「ふふ、かしこまりました。少々お待ちください。」

いつもなら、頼んだものが来るまでイヤホンをつけてひとりの世界に入り浸っているのに。
Aはこの店の雰囲気が心地よく、気づけば自然とイヤホンの電源を切っていた。

「失礼します。オレンジジュースです。」

コースターとともに提供されたオレンジジュースを一口飲む。
ストローを通った冷たいオレンジジュースは、散歩後の乾ききった喉を潤してくれた。

目の前のカウンターキッチンから、ふわふわと水蒸気が漂っている。

(何かを蒸しているようにも見える、付け合せの温野菜だろうか?)

その予想とは裏腹に、水蒸気の向かう方向からふわりと漂った食パンの匂いに、Aの食欲は増進した。
ぐう、と腹が鳴る。

「あはは、もうすぐ出来ますから待っててください。」

なんと、今の音が聞こえていたらしい。
恥ずかしさにいたたまれなくなって、誤魔化すためにオレンジジュースをもう一口煽った。

2.ハムサンド→←プロローグ



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設定タグ:名探偵コナン , 安室透 , 沖矢昴   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:ンョョ | 作者ホームページ:https://odaibako.net/u/DhbwLy  
作成日時:2023年4月8日 2時

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