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それから時は過ぎ、春の陽気が少しずつ感じられる2月になった。
周りの女子も男子もどこか浮ついている。
何を隠そう、今日はバレンタインデー。
元々日本の文化でもないのに、今じゃどこの国よりも盛り上がってそうなイベント。
そんなお菓子メーカーの策略にまんまと乗せられているのは、僕も同じだった。
「剣持は良いよなー!Aちゃんからチョコ貰えてさあ!クソッ、リア充め!」
「お母さんから貰えるでしょ。」
頭を抱えて喚く男友達をふんと鼻で笑い飛ばした。そいつはどうやら0個らしい。可哀想なやつめ。
席に座りながら談笑していると、更衣室から帰ってきたAに手を引かれた。
ニヤニヤと見てくる男子共に睨みをきかせてガンを飛ばした僕は、大人しくAについて行った。
人通りのない廊下で、Aは紙袋をひとつ手渡してきた。小さい紙袋なのに中身はずっしりと入っているようで、ちゃんと重量があった。
「これね、チョコプリン!頑張って作ったから、味わって食べてよ?」
袋の中を覗いてみると、可愛く包装された入れ物があった。それと、白い封筒がひとつ。宛名のところには僕の名前が書いてあった。
「この封筒は?」
「あ、…えーっと。言うの恥ずかしいなあ。いつも感謝してるよ!っていうお手紙です。ハイ。」
しどろもどろに説明するAがとても愛らしくて、ぐいっとAを引き寄せてその身体を抱きしめてみた。
案の定Aは僕の腕の中で暴れているけれど、運動部でもある僕の力に非力なAは敵うはずもなくて。
距離を取ろうとするAをぎゅうっと抱きしめて、Aを堪能する。体温も匂いも、その声も。全部が愛おしい。
「剣持くん!ここ学校だよ!?」
「だぁめ。まだこうさせて。」
キスもしてみよう、と思って唇を近づけた瞬間、誰かが歩いてくる音がして僕たちは急いで離れた。
さすがに僕も驚いて、心臓がバクバクと音を立てている。
結局、Aは下校時間になるまで口を利いてくれなかった。あとから聞いた話だと、ちょっと怒ってたらしい。
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ンョョ(プロフ) - すず。さん» すず。様、コメントありがとうございます〜!更新遅めですが頑張ります! (2023年2月19日 23時) (レス) id: 795bb29f75 (このIDを非表示/違反報告)
すず。(プロフ) - とても好きな作品です!これからも更新頑張ってください! (2023年2月19日 21時) (レス) @page21 id: 43a5a8ad4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ンョョ | 作者ホームページ:https://odaibako.net/u/DhbwLy
作成日時:2023年1月17日 12時