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いつも通り学校が終わった。
僕は変わらない外の風景をぼうっと眺めながら、部活を終えた僕は、Aが戻ってくるのを待っていた。
先程、Aはアンドロイド研究同好会を名乗る数人の生徒に囲まれて、あっという間に連行されていった。「ちょっとだけ借りられてくるね!」と僕に言い残して。
少しの寒さを孕んだ風が窓の外からびゅうっと吹き込んできて、僕の頬を撫ぜて過ぎ去る。日はもう沈みかけていた。
その昔、僕がどこかで聞いた話。
“アンドロイドには通報ボタンがあって、とある配線を切ればたとえ【恋】を自覚しても政府の目から逃げられる”という話。
“世界のどこかには、アンドロイドと結ばれた人がいるんだって!”と、僕のぼやけた記憶の中の影は続ける。
僕は半信半疑だった。
そんなもの、有るはずが無いと思っていた。
父の話を聞くまでは。
子供の頃の僕の無垢な質問に、僕の父は“ある”と正直に答えてくれた。
そして、ある説明書を見せてくれた。すべての文言は覚えていないが、注釈と図解は覚えている。
アンドロイドのうなじに通っている一本の赤い線を切れば、その通報機能は停止すると注釈に書かれていた。
それを、僕が切れば。
もしAが僕のことを好きになったとしても、政府に処分されることはなくなる。
僕は思わず息を呑んだ。
これは反抗だ。反乱だ。謀反だ。反逆だ。
僕がそんな大それたことを成し遂げられるのか、という疑いの気持ちは不思議と少なかった。
(Aのため。僕がやらなきゃ。僕がやるんだ。)
興奮と戸惑いがぐっと食道をせり上がってきた気がして、僕は口を覆った。
その瞬間、Aが僕の名前を呼んだ。
「ごめんね刀也、先帰っててくれる?まだもうちょっと研究したいらしく、て───」
薄暗闇の中、口元を手で押えている僕を見て、Aはぎょっとした表情で駆け寄ってきた。
「刀也!?大丈夫?気分悪い?」
至極心配そうに僕を見つめるAの前髪をかき分けると、額へ口づけた。
そして、強くつよく抱き締めた。
人の体温に似せられた温かさが布越しに僕の肌へ伝わってくる。
「ちょっ、」
「僕はAのことが好きです。恋愛的な意味で。」
何か言いかけたAを無視して、僕は被せるようにして言い放つ。
「もしも僕の気持ちに応えてくれるなら、今夜0時にリビングに来てください。」
その場に固まってしまったAを教室に残して、僕は足早に家へ帰った。
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ンョョ(プロフ) - すず。さん» すず。様、コメントありがとうございます〜!更新遅めですが頑張ります! (2023年2月19日 23時) (レス) id: 795bb29f75 (このIDを非表示/違反報告)
すず。(プロフ) - とても好きな作品です!これからも更新頑張ってください! (2023年2月19日 21時) (レス) @page21 id: 43a5a8ad4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ンョョ | 作者ホームページ:https://odaibako.net/u/DhbwLy
作成日時:2023年1月17日 12時