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刀也が急いでドアを開けると、Aはベッドに腕をかけて蹲っていた。
その息はハアハアと荒く、首はちからなく項垂れている。
あまりにも異常な彼女の様子に刀也は慌てて膝をつき、Aの顔を覗き込んだ。
赤い。熱だ。
脱力した手を触り額も触ると、すぐさま発熱していることがわかった。それも、高温。
「は、っふー、はぁ……はひゅ、っ!げほ、っ、…ひゅ…」
Aの息は荒くなるばかり。
時々息の仕方を忘れたように喉を鳴らし、はくはくと吸えていない息をしていた。
刀也はAのことを横抱きにすると再度ベッドへ降ろし、布団をかけてやる。
「A、A。大丈夫、ゆっくり息しましょう。」
とん、とん、とん。Aを落ち着かせるため、刀也はAの右手をやわく握って、リズムを与えた。
熱に浮かされたAにその声が届いたのか、段々息が落ち着いて、Aが掠れた声で言葉を紡ぎ始めた。
「ごめ、とやぁ…朝おきて、立とうとしたら立てなくて…わたしっ、ごめんなさいぃ……」
謝罪の言葉とともにまろびでたのは、大粒の涙だった。
Aの涙を見るなんて数年ぶりで、いつも強気なAが泣いて謝るなど、初めての経験。
刀也は内心慌てつつもAの涙を拭ってやり、涙のあとを消すかのように頬を撫でた。
「だいじょうぶ。とりあえず僕は学校に行きますけど、連絡は学校にもお義母さんにもしておきますね。あとで薬持ってくるから、Aは飲んだら寝ててください。お腹がすいたら冷蔵庫にある僕のプリン食べてていいですから、ね?」
「ゔん゙……!」
ぐすぐすと鼻を鳴らしつつも泣き止んだAの頭をいいこいいこと撫でてやったあと、刀也はキッチンへ水と薬を取りに行った。冷えピタもあるといいか。
Aのそばへ戻った刀也は、Aにコップを渡そうとするも、Aはうまく力が入れられないのか、コップを落としそうになる。
ベッドのサイドテーブルにコップを置くと、刀也はストローを取りにキッチンへ。
コップへストローを差し、コップ本体は刀也が支える形でAの水分補給を行う。一回一錠の解熱剤をAの口へ放り込み、飲ませた。
これで当分はいいはず、…だ。
部屋を後にしようとした刀也の服を、Aは指先で掴んだ。がく、と刀也の背中が揺れる。
「どうしたんですか。」
「ううん、いや、あのさ…ありがとう。早く帰ってきて、ね。」
予想だにしていなかった言葉に、刀也は人知れず照れた。
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ンョョ(プロフ) - すず。さん» すず。様、コメントありがとうございます〜!更新遅めですが頑張ります! (2023年2月19日 23時) (レス) id: 795bb29f75 (このIDを非表示/違反報告)
すず。(プロフ) - とても好きな作品です!これからも更新頑張ってください! (2023年2月19日 21時) (レス) @page21 id: 43a5a8ad4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ンョョ | 作者ホームページ:https://odaibako.net/u/DhbwLy
作成日時:2023年1月17日 12時