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四巡目にしてようやく、このループする世界の概要を掴んだ。大まかにわかったことはこの三つ。
【僕がどんなにイレギュラーな行動を取っても、Aは僕に惚れる】ということと、【Aは修了式の翌日に死 亡する】ということ。
そして、【僕の行ける場所が限られている】こと。
学校を中心にして半径4km以内までは自由に行き来できるが、その先へは行けない。
見えない透明な壁があるらしく、それより外へ出ようとすると謎の引力に引き戻された。
十一巡目。
僕は思いきって学校の屋上から飛び降りてみた。
結論から言うと、僕は死 ねなかった。怪我すらもしなかった。かすり傷はひとつもない。
飛び降りた瞬間、僕はまばゆい光に包まれ、気がついたときには地面に寝転んでいた。
どうやらこのクソみたいな世界は、僕が死 ぬことを許してくれないらしい。
███巡目。これが何巡目かなんて、もはや数えていないし覚えてすらいない。記録してくれる人もいない。
僕はAを家に閉じ込めてみた。
こうして家から出さなければ、Aは事故で亡くなることはないと思ったから。
その結果、Aはあっけなく死 んだ。
手枷も足枷も繋げていたのに、舌を噛み切って死 んだ。
僕の部屋にはAの血痕が残っていた。
次は猿轡でも噛ませておかないといけないな、と僕は先程までAだった肉塊を見下ろす。
たとえどんな手を打っても、Aは死ぬ。
僕はそれを止められない。
“無意味”を繰り返す世界に、僕は疲れてしまった。
僕は瞬きをして、また世界をリセットした。
朝日に目をやる。
この景色はいったいいつまで見ることになるのだろうか。
「……助けて…。」
すべてを諦め、いつの間にか僕の辞書から消えていた“助けて”という言葉が、ぽろっと口をついて出た。
身も心もひどく疲弊した僕の声は、誰にも届かない。
届かないと、思っていた。
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ンョョ(プロフ) - すず。さん» すず。様、コメントありがとうございます〜!更新遅めですが頑張ります! (2023年2月19日 23時) (レス) id: 795bb29f75 (このIDを非表示/違反報告)
すず。(プロフ) - とても好きな作品です!これからも更新頑張ってください! (2023年2月19日 21時) (レス) @page21 id: 43a5a8ad4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ンョョ | 作者ホームページ:https://odaibako.net/u/DhbwLy
作成日時:2023年1月17日 12時