【twst】うみはきらい。 (ページ10)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:80,250 hit

珊瑚の海　10 ページ10

「え、…なんですか」

思わず顔をあげて隣を見上げた。

「なんですかって、さすがに泣いている人を見かけてそのまま立ち去れませんよ」

「…めんどくさいとは思わないんですか」

「誰にでも泣きたいときはあるでしょう」

淡々とそう呟くアズール先輩

意外だ。てっきりそのままどこかに行ってしまうと思ってたのに。

「何故泣いているかお聞きしても？」

「くだらないことですよ」

「いいですよ、別に。くだらないかどうかなんて関係ないでしょう」

「……なんか、優しいですね。アズール先輩」

「あなたが泣いていたことを全生徒にバラしてもいいんですよ」

「いつも優しいですけど今日はもっとってことです！！！」

前言撤回、この人は通常運転だ。

アズール先輩はふふっと笑って冗談ですと言った。

…本当に冗談なのか？いやでもこの人に限って嘘はつかないだろう(と思いたい)。

「…ただ、元の世界が恋しくなっただけです」

「元の世界ですか」

「はい。もちろんこっちでの生活もすごく楽しいです。見るもの触れるもの全てが新鮮で、私の世界では夢の話だった魔法が使えて。みなさん優しくしてくれるし」

「でも、やっぱり寂しいんです。」

初めて人にぶつけた本音

幼子のような拙い言葉も、アズール先輩は何も言わずに聞いてくれた。

もちろん、馬鹿にもしなかった。

「私、魔法も使えないから、みんなに助けてもらってばっかりで。…役立たずで申し訳なくなっちゃって」

あ゛ーー、また泣きそう。せっかく止まったのに。
言葉にすると気が楽になるなんて言ったのはどこの誰だ。そんなことないじゃないか。

「…っごめんなさい、こんなことで、」

「＿＿訂正してください」

被せるように聞こえた先輩の言葉

それは少し怒っているようにも聞こえた。

「え、なにを…」

「役立たずという言葉です。それとも誰かにそう言われたのですか」

「いや、言われては無いですけど！」

「…あなたは役立たずなんかではない」

不意にこっちを向いたアズール先輩の顔は
私よりも泣きそうになっていた。

「Aさんの寂しさを僕らが埋めることはできません。どんな魔法を使ってもそれは変わらない。

ですが、あなたが来てくれたことで救われた人がたくさんいます」

「人の気持ちを考え、行動し、人に寄り添う…それができるあなたを役立たずだと思う人がいると思いますか？」