きんぷり。【King&Prince】10 (ページ12)

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動き出すページ12

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A

手に持つスマホが震えてるのが分かる

怖くて

緊張して

数時間後には世界が変わってしまってる

そう思うと呼吸が浅くなる

「行こうか」

スタッフさんの声かけで動き出すメンバー

どことなく静かな楽屋を後にする

けど紫耀の姿が見えない

じん「どこ行ったの？」

海人「さっきトイレ一緒に行って…」

岸「から？」

ひとつだけ心当たりのある場所

最近の紫耀はスマホと睨めっこしてることが多い

他の音や物なんて視界に入ってないような

そんな感じ

今日もそーっと覗いた廊下の隅に

人気のない空間で1人しゃがみ込んで小さな画面を見ていた

『…』

近づくべきか見守るべきか

『本当に発表するの…』

今日のMステ後の脱退発表は

本当にやるの

不意にこぼれた言葉

それが紫耀に聞こえたのかなんなのかわからないけど

はっと顔を上げて視線がこっちに向く

『…あ、…ほ、本番だって』

なんでか、ぎこちなくなって

声が出てこない

きっとこの本番を迎えなければ

発表もしなくて済む、なんて安易な考えが浮かんでいるから

来なければ良いって

そんな時間

そう思ってる

『…本当に発表…、するの？』

その言葉で立ち止まった紫耀はちょうど私の隣まで来てて

光のない目がこちらを見つめた

ふっ、と微笑みのように見えて

諦めのように見える笑みを浮かべて

私を見つめたあと本番のスタジオへ歩き出そうとした

聞こえてくる、ガヤガヤした声が

戻ってきた周りの世界の音が

これは現実なんだと思い知らせてくる

『何で辞めようと思ったの…』

私だけ何も知らされてない

細かいことも何もかも

平野「良いから。もう」

『え？』

平野「何も知らなくて良いから」

『でも納得いってないような気がして』

平野「…。関係ないでしょ？」

『…』

関係ない…、か

そっか

いくらメンバーでも個人の人生はあるよね

それ以上は入ってくんなってか…

『…』

.

平野「…、ごめんね」

そんな紫耀の声なんて

この時の私に届いてない