5話 回想 ページ7
トレーナーside
『屋上に行ったら貴方がいて…、
扉の隙間から見てました!ごめんなさいっ!』
ここでしらばっくれてもしょうがない。そう思った私は、潔く白状することにした。
すると、これまでの彼女の笑顔は消えた。
こっそりと見られていたのだから、少なくとも良い思いはしないだろう。嫌われても仕方ない。
数十秒の沈黙の中、私はそんなことを考え、一人心を沈ませていた。
だが彼女の口から発せられた言葉は考えていたものとは大きく異なるものだった。
「本当?見てたの?じゃあさ、君がどんな風に見えたか、
感想を聞かせてよ!」
キラキラとした目で聞いてくる。てっきり怒るか呆れるかだと思っていた私は、予想外すぎる出来事に数秒思考がフリーズした。
「おーい、どうしたの?…急に固まっちゃった。」
肩を叩かれる。一瞬宇宙に行っていた脳が返ってきた。
『あ、あぁ、ごめん!……
いや、こっそり見てたから、
怒ってるのかと思ってて。驚いて。』
「怒るわけ無いよ!逆に、見てくれてありがとう、
って感じだよ!あ、ほら、早く感想〜!!」
『あ、えっと……、 途中からしか見てなかったけど、
凄くパワフルで、こっちも元気が貰えるような踊りだっ
たよ!』
少ししどろもどろになりながら答える。
「そっかぁ〜!元気を貰えた、かぁ〜!!」
ニヤニヤしながらそう呟く彼女の頬はほんのりと赤く、照れているのが分かった。
しばらくすると、彼女は急に伸びをし、私の前に立った。
「そう言ってもらえてすっごく嬉しい!
…ねぇ、明日からも私のサンバ、見にきてくれない?」
もし君が良ければだけど、と付け加える彼女。
私の答えはもちろん….
『うん。喜んで見させてもらうね。』
Yesだ。
「やった〜!
あのね、私、いつもここで5時位からやってるから!」
飛び跳ねて喜ぶ彼女。それを見て此方も自然と頬が緩む。この選択は間違っていなかったんだな、と思った。
その後は風が強くなってきた為、2人で屋上を降り、
私は彼女を校門まで見送った後トレーナー室に戻り、年間スケジュール帳の明日のマスに
5:00〜屋上に行く
と書き込んだ。
いつもの日課が始まったのは、この日からだった。
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作者名:はむすたぁ | 作成日時:2024年3月16日 8時