もう一つの輝き［ウマ娘］ (ページ3)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:154 hit

1話　後半ページ3

トレーナーside

屋上の扉を開けると、"彼女"は私に気付き走ってきた。

待ってくれ。また飛びつく気か？それはまずい。早く避けなければ。

そう思ったのも束の間。私は"彼女"の速さに到底反応することができず、飛びつかれ、よろけて後ろに倒れた。

ゴンッ！と音がして、私の頭が床にぶつかる。痛い。これだから、飛びつかれるのは嫌なんだ。

『いてて…、飛びついてくるのはやめて、って、この前言ったよね‥？』

そう言いながら頭を押さえて立ち上がる。そんな私を見て、"彼女"はばつが悪そうな顔をした。

「ごめんって…。でも、この3日間、観客がいないのに踊る虚しさを感じてたんだからさ！このくらいいいじゃん！それに、元は君が……」

不満ありげにぶつぶつ呟く彼女に、

『ほら、"サンビスタ"、今日も見せてくれるんじゃないの？』

と言うと、彼女、サンビスタは、はっと思い出したような顔をしてダッシュで自分のスマホを持ってきた。

「今日もよろしくね！感想もだよ！」

一緒でご機嫌が直ったサンビスタはそう言って動画の再生ボタンを押す。

様々な楽器が4分の2拍子を刻み出し、彼女はその陽気なリズムに乗ってサンバを踊り始めた。

彼女は小刻みにステップを踏み、曲に合わせて手の動きも入る。

彼女の髪や尻尾、そこに付く、普段使いには派手すぎる大きめな羽の飾りもステップに合わせてひらひらと舞っている。その姿は、花の周りを楽しそうに飛ぶ蝶の様だ。

彼女の肌にうっすらと浮かぶ汗横側を照らすオレンジの照明、そしてサンバ特有の腰の動きから、妖艶さが感じられる。

曲が終わり、息を上げながら「どうだった？」と、キラキラとした瞳で聞いてくる。

『可愛い感じから大人のセクシーな感じまで表現
　できててすごかったよ！』

私は正直サンバについて詳しくは知らないので、所詮は素人の感想だ。だが、それを聞いたサンビスタは心底嬉しそうな顔をして、

「えへへ、ありがと！今日はね、ここがこうなるようにね………」

と言った具合で話し始める。

ここ最近の私の日課は、
夕方の屋上で、彼女のサンバを見ることだ。