これが恋ってやつかな ページ3
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純喜「成人式ぶり、よな？」
「うん、久しぶりだね」
前会った時よりも、ずっと大人びてかっこよくなっていた彼。
思わぬ再会に胸は早鐘を打つ。
純喜「ほんっま、こんな綺麗になって声聞かんかったらAだって分からんかった」
「相変わらず、お口がお上手ですね」
私がそう突っぱねると、彼は素直じゃないところは変わらないと笑った。
「今実家に帰って来てるんだ？」
知ってるけど！知ってたけどね！
朝から我が家はあんたの話で持ちきりだったんだよ！
純喜「そう、活動が一段落して一回帰って来た」
「そうなんだ、こないだの音楽番組見たよ」
そう私が言うと、照れ臭そうに笑う純喜。
純喜「Aに見られてると思うと恥ずかしいわ！」
「カッコよかったよ、すごく」
純喜「ほんまにだるい」
少し耳を赤くして微笑む純喜は、何だか少し懐かしくて。あの青春時代を思い出して胸が苦しくなる。
私の胸の音をかき消すように、雨はどんどん強くなっていく。
「傘、持ってないの？」
純喜「うん、降ると思わんくて」
「これ、使って帰りなよ」
私は純喜に手に持っていた折り畳み傘を差し出す。
彼は世界を目指すアイドルであって、ここで一般人の私と話しているだけであらゆる疑いをかけられたら溜まったもんじゃない。
純喜「でも……ど……るん？」
「ん？」
強くなる雨がお互いの声をかき消すから、自然に私たちの距離は近くなる。
純喜「でもAはどうやって帰るん？」
「私は家近いから走るし大丈夫」
純喜「だめ。風邪引くやろ」
彼は私が差し出した傘を開いて、チラッと私の方を見る。
かえろ、そう口パクしてマスクを付け直し、帽子を深く被る純喜。
ドクン、と高鳴る心臓があの頃の甘い気持ちみたいで苦しい。
こんなこと、昔もあったような気がする。
一人分の折り畳み傘は狭くて、さらに縮まる距離が焦ったい。
冷静に冷静に。私はもういい大人なんだから。
これは偶然、偶然こうなってしまっただけ。
アイドルと相合傘なんて不可抗力だったんです！と何度も心の中で繰り返し続けた。
・
続く
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作者名：璻子 | 作成日時：2023年8月27日 2時
