社長、甘やかさないでください！【2j3j】

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陽の落ちた空、静かな波の音。




『……落ち着きますね』


加「…本当に、」



感嘆の声が小さく響く。

波の音が大きくなると同時に風が2人の間を抜けた。


『っわ、つめた』




思わず声を漏らした後に、不意に肩に温かさを感じて隣を見ると、薄着になったハヤトさんが切なげに微笑んでいた。





『だめです、ハヤトさん風邪引いちゃう』


加「大丈夫ですよ。Aさんはワンピースだから裾から風が入り込んできて寒いでしょう？」

「今だけでも着ていてください。」


『…ありがとうございます』



加「あっ、あれみてください」


『ん…？』



指さした方には、傍に立つ灯台の明かりがふわりと広がる瞬間が見えた。



『確かあの灯台って、ジンクスみたいなのありますよね』


加「そうなんですか？…どんな？」




『灯台に向かってひとつの願い事を何度も祈ると、その願いが叶う……っていう、ありきたりなものです。』

『本当に叶ったって人も時々聞きますけど』


加「願い事……」


『…あるんですか？』


加「願い、というか…こういうのに頼って叶えたい訳ではないんですが。夢とでも言っておきます」


『夢、か…いいですね』

『ハヤトさんの夢が叶うように祈っておきます』



加「………」





静かに目を閉じる。

……今日のことは一生忘れない気がする。



同じ気持ちだといいな、と欲張りにもうひとつ願いを込めて、波の音に耳を澄ませた。

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