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．
『え…』
「おはよ〜」
そう言って私の手を掴んでずんずんとどこかへ向かって歩みを進める。
視界に映る金髪はやっぱり綺麗だ。
しばらくして足を止めたのは自販機の前のフリースペース。
「座ってよ」と言われて大人しく隣に腰を下ろす。
「いきなり連れてきてごめんね。
君さ、この間カフェにいたよね？」
『あぁ、はい。いました、けど…』
「俺ずっと気になっててさ〜」
『え？』
「ずっと気になってたの。Aさんのこと！」と色素の薄い綺麗な顔を勢いよく私に向けた。
気になってた…？
こんなどこにでもいるような女を…？
あっ、もしかしてスケッチしたのバレた？！
『あ…ごめんなさい！勝手にスケッチしちゃって…
不快でしたよね…ほんとすみません。』
金髪美人さんに体を向けて頭を下げると聞こえてきたのは可愛らしい笑い声。
へ…？と顔を上げると口元に手を当てて肩をすくめて笑っていた。
「そんなんじゃないよ！まぁ完成したスケッチは気になるけどさ？そうじゃなくて、Aさん可愛いな〜って。」
『か、かわいい…？』
「今日はイメージ違うけど…こっちの方が好きかも」
あぁ！そういうことか！
金髪美人さんが見たのは仕事前の私…
つまりお仕事用の濃いめのメイクに男ウケいいように巻いた髪、外でお客さんと遭遇してもいいようにこれまた男ウケを意識した私服。
今は学校用にいつかの元彼から頂戴した好みのビッグパーカーに暑いからって肌を出した短パン。それに足元の厚底もゴツめのメンズライクなものだ。
メイクだって今日はバイトがないから薄めにしてきた。
『あ…それは、バイト用だったので…』
「そうなんだ？まぁどっちもすごい可愛いけど」
なんとなく、分かってしまった。
この人が口説いてきてることに。
「連絡先交換しよーよ」と言われ渋々携帯を出す。
おかしいな。前までだったら適当に交換して適当に遊んでたのに。
なんだろ、この、背徳感は。
ブーッと携帯が鳴りトークルームの【北斗くん】の上に来たのは【京本大我】の文字。
『京本、さん…』
「あ、言い忘れてたわ。」
「大我って呼んで！」と言ったあともう行かなきゃ、と席を立った。
教室まで送ってくれた別れ際に頭に触れた手。
なんか違うな、って思ったのはどうして…？
．
続く (更新停止中)
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作者名：娘娘 | 作成日時：2020年6月6日 15時
