月をかじる猫 ページ41
「ヒョン居なきゃ来ちゃダメなんじゃないの」
「あ…、」
「…どうしたの」
だいたい誰か居るだろうな、と思って運動場に来た。
ジフニに連れられたスンチョリヒョンや、スニョンが居ることが多いけど、そのだれでもない。
Aは話しかけられるまで気付かないどころか、涙を拭う素振りをした。
俺が頬に手を添えたら、嫌がる素振りもせず警戒心もないこいつに、ため息さえ出てきそうだ。
「…へんな顔」
きっと気を抜いたら、顔を近づけて困らせたくなってしまうから、柔らかい頬を摘んで伸ばした。
でも結局は眉毛を下げてひどいなー、と笑うAのことを、俺は慰めるなんてきっと向いてないんだろう。
Aの隣に座って、膝の上に投げ出されていた手を握っても、嫌がりもしない。握り返す力だって笑ってしまうくらいに弱い。
その手は冷たいし、小さいし、細いし。
最年長とジフニに怒られて学習したようで、ラインがわからない服を着ているけど。そのスタイルが良いことなんて、手首や足首を見ればすぐ分かるだろう。
「ウォヌオッパ、あのね」
「うん？」
「…なにも聞かないでほしいんですけど、」
「うん」
「……抱きしめてくれませんか」
思わず息を飲んだ。
「…前に、寂しいときに抱きしめる関係にならないかって、言ったじゃないですか」
「うん、言った」
「あのときは、だめだって思ってたし、寂しくならないって思ってたから、断ったと思うんですけど」
「…そうだな」
「……寂しいから、頼ってもいい、ですか」
律儀で、素直で、かわいいな。
許可なんて取らなくても、別にいいのに。
きっと俺以外の誰でも、Aが抱きついて嫌な人なんていないよ、と思ったけれど。
俺は優しくないから、俺だけに頼って欲しくて、敢えてそんなこと言わない。
「いいよ、おいで」
立ち上がって手を広げたら、ゆっくりと体に収まった。
首に手を回すなんて慣れたことは出来ないAだから、手をぐっと握って回してこなくて。
「手はここ、こうすんの」
「…、うん」
「ちゃんとまわして」
「…う、ん」
「よしよし」
俺よりずっと背も低いし、肩幅だって無くて、柔らかくて。何度染めたって子どもみたいな髪質なこの子は、純粋すぎるほど純粋で。
きょうだいが居ないわけじゃないのに、甘え方も分からないのか。
それとも、なにも言えないから、
何も聞いてこないであろう俺を選んで甘えたのか。
いや、もうこの際。
どっちでもいいか、そんなこと。
．
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KEY(プロフ) - いつもありがとうございます🙇いつも最高です！ (2022年10月14日 22時) (
レス) @page43 id: e6e7d876c8 (このIDを非表示/違反報告)
り(プロフ) - すごくキュンキュンします、何回も読み返してます😭 (2022年9月27日 10時) (レス) @page41 id: cb9ba72967 (このIDを非表示/違反報告)
名無し54892号(プロフ) - 作者様のお話本当に大好きなんです…！とってもキュンキュンして読んでるだけでも胸が苦しくなってくるような、本当に素敵な作品だと思います🥲何回も読み返して更新されてるかな？と見に来てしまっています笑決して無理はなさらず続きが読めるのを心待ちにしてます！ (2022年9月4日 15時) (レス) id: 1445cdbb12 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています！！これからも無理のない範囲で良いので更新して頂けると嬉しいです私の生活の一部なんです🥲💞これからも頑張ってください！！ (2022年8月20日 19時) (レス) @page38 id: 0a0a63f7c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ - 作者様の作品とても大好きで何回も読み返させていただいています！ これからも無理のないように更新していただけると幸いです！これからも頑張ってください！ (2022年8月20日 16時) (レス) id: cc4c34b3df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんちゃん | 作成日時：2021年8月21日 4時
