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「こんな酷い怪我なんて知らなかった」
「ぜんぜん、大袈裟なだけです」
自分ひとりで椅子にも移ることができるけど、それでもジニョクさんは優しいから腕と腰に手を添えてくれた。大丈夫？と心配そうにしてくれるけれど、それは私がジニョクさんに言いたい言葉です。
今だって、きっと何かあって外に出てきたんでしょう？
「…あ、そうだ。ジニョクさんにこれあげたくて」
「……さつまいも？」
「はい、嫌いじゃなければぜひ」
「好き、ありがとう」
まだほかほかのそれを、ジニョクさんは食べる。咀嚼して、飲み込んで。はあ、と深いため息をついたとき、その声に涙色が混じっていることに気が付いた。
「…おいしい、あったかくて」
「よかった。私が作業に煮詰まったり落ち込んだときによく食べるんです。日本にも、同じような料理があって、おばあちゃんがよく作ってくれたから」
「…落ち込んだとき…そうなんだ」
「あとで、チームの皆にもあげてくださいね」
「…うん、みんなで食べようと思う」
ジニョクさんと、少しなにも言葉を交わさずにぼうっとしていた。いちいち何も聞かないことが正解だと思うし、顔を見たらわかる。
衝突してしまったのか、それとも怒ってしまったのか。後悔の色も、葛藤の色も見える。ジニョクさんは優しいから理由がなく怒ったりしない、なにごとも楽しいほうがいいと思うタイプなんじゃないかなと見てて思う。そんな彼には人望があるし、私がいちいち口を挟まずとも解決できると思うから。
「さっきボーカルの子たちが、歌を褒められた、ってうきうきしてた。ダンスの子たちも、先生に会えたって嬉しそうに話してた」
「あは、嬉しいです。皆そんなこと話してるんだ」
「…俺も、会えたらいいなって思ってた」
「本当ですか？嬉しいな」
「ほんとだよ。会ったら美味しいもの食べられたし、元気出た」
ありがとう。
そう言って笑ってくれたジニョクさんは、やっぱり少し泣きそうな顔をしている。ここまで深く色んなものに頭を悩ませているのだから、中途半端に触れていけないと思う。私が関わって何かが変わるものでもない。
「…一緒に戻ってくれる？少し戻りにくくて」
「ふふ、はい」
彼に車椅子を押されて戻ったXポジション部屋。扉に集まった彼にごめんなさいと頭を下げる練習生たちの目も赤い。
そんな彼らと一緒に食べた甘い大学いも。はるか昔、練習室で泣きながら、ひとり食べたあの記憶の味よりもずっと美味しく感じた。
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＊ゆいな＊(プロフ) - 更新待ってました（ ; ; ）最高です！今まで読んできたお話の中で一番大好きで何度も何度も読み返しました！！更新もちゅんちゃんさんのペースで無理しないで下さいね(*^^*)いつも応援してます！大好きです！ (2021年6月12日 11時) (
レス) id: 805ae0b089 (このIDを非表示/違反報告)
フィガロ - 更新はもうしれないのでしょうか（ ; ; ）？ 突然更新が途切れてしまったので心配です…お知らせなどでもいいので何か報告待ってます(^^) お話の内容とっても好きです！更新も楽しみにしていますm(_ _)m (2021年5月19日 0時) (レス) id: 2c85f96aa8 (このIDを非表示/違反報告)
＊ゆいな＊(プロフ) - 久々の投稿ありがとうございます！！！！ハニオッパきゅんきゅんしました！！ (2021年3月30日 20時) (レス) id: 805ae0b089 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 更新待ってます！ (2021年3月5日 0時) (レス) id: 68c62b5d72 (このIDを非表示/違反報告)
さか(プロフ) - ふわふわした話だけじゃなくて、少し辛いお話が混ざってるのがとても好きです。でも、あまり過度ではなく直接的な痛い表現などは避けて書かれているのかなと伺えるので読んでいても辛い気持ちにはなりません。程よく読みやすくとても好きなお話です。 (2021年2月13日 6時) (レス) id: 4188621a8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんちゃん | 作成日時：2020年11月27日 8時
