盾のような人 ページ36
「俺は手加減するつもりはないからな」
いつものレコーディングブース。
機材を確かめるウジオッパも、いつもと変わらず同じ表情で椅子に座っている。
ただ違うのは、ここに私が教えている練習生たちが来ること。彼らをプロデュースし、レコーディングを行うのがウジオッパだと言うことだ。
「あと…声帯、痛めてる子が居るんだろ」
「…ここにも今日、来るはずです。何度か練習を見たけど、結構痛めてるみたいで…」
「じゃあ、今日はかなりつらいと思うよ。心も、喉も。Aが傍に居て、助けてやれ」
「うん。…オッパ、優しいね」
「…なんだよ。…べつに、ふつうだろ」
照れくさそうに笑うウジオッパ。
抱きつこうとすると耳を真っ赤にして嫌がるから、やっぱり可愛くて大好きだ。
彼らが恐る恐る入ってきたときの表情は忘れない。
ウジオッパも合宿所へ迎えに来てくれたことはあるから、まったくの初対面ではない。でもその時に見たイジフンというオフのオッパと、今のプロデューサーモードのウジオッパは、まさに180度違うもんね。
練習生たちの私に助けを求めるかのように見る瞳が小動物のように可愛くて、つい笑ってしまった。
「ウォンジンくん、隣に座ってもいい？」
「……、はい」
「ありがとう」
始まったレコーディング。その様子を眺めながらソファの隅に座る彼の隣に、断りを入れて腰を下ろした。
皆の視線でわかるよ。みんな、ウォンジンくんのことを心配して、気にかけてる。
でも彼は自分に怒って、イライラしている。だから慰めていいのか分からないんだよね。気持ちがわからない人に言われても、と傷つけてしまうかもしれないから。
レコーディングができないということは、せっかくのオリジナル曲に声が入らないかもしれない。練習生が音源に声を入れることなど、不可能に近いほど難しい。
デビューを、しない限りは。
「…僕、レコーディングできない、ですか？」
「ううん。ウジオッパはウォンジンくんの声を絶対に入れるって言ってるよ」
「……良かった、」
「でも、出せない音程があればパートの交換は有り得る。それは、…大丈夫かな？」
「はい。…悔しいけど、悪いのは僕ですから」
「ちがう、何も悪くない。その考えはダメだよ」
彼の膝の上、握られた拳を両手で包んだ。絶望に染まりかけた瞳を、どうにか救ってあげたい。
誰にでも起こり得ることが、ただ彼に起きているだけ。誰も悪くないの。
"あなたは、なにひとつ悪くないんだよ"
→
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＊ゆいな＊(プロフ) - 更新待ってました（ ; ; ）最高です！今まで読んできたお話の中で一番大好きで何度も何度も読み返しました！！更新もちゅんちゃんさんのペースで無理しないで下さいね(*^^*)いつも応援してます！大好きです！ (2021年6月12日 11時) (
レス) id: 805ae0b089 (このIDを非表示/違反報告)
フィガロ - 更新はもうしれないのでしょうか（ ; ; ）？ 突然更新が途切れてしまったので心配です…お知らせなどでもいいので何か報告待ってます(^^) お話の内容とっても好きです！更新も楽しみにしていますm(_ _)m (2021年5月19日 0時) (レス) id: 2c85f96aa8 (このIDを非表示/違反報告)
＊ゆいな＊(プロフ) - 久々の投稿ありがとうございます！！！！ハニオッパきゅんきゅんしました！！ (2021年3月30日 20時) (レス) id: 805ae0b089 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 更新待ってます！ (2021年3月5日 0時) (レス) id: 68c62b5d72 (このIDを非表示/違反報告)
さか(プロフ) - ふわふわした話だけじゃなくて、少し辛いお話が混ざってるのがとても好きです。でも、あまり過度ではなく直接的な痛い表現などは避けて書かれているのかなと伺えるので読んでいても辛い気持ちにはなりません。程よく読みやすくとても好きなお話です。 (2021年2月13日 6時) (レス) id: 4188621a8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんちゃん | 作成日時：2020年11月27日 8時
