【文スト】言葉にできない愛を捧げるー紫水晶の狂奏篇ー

第一楽章:presto ページ1

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音楽だけが世界語であり、
翻訳される必要がない。
そこにおいては魂が魂に話しかける。




国木田は頭を抱えていた。



彼は何かと頭を抱えることが多いが、それは今日もである。



彼の胃は日々鈍器で殴れられるような、刃物で刺されたような、様々な痛みに悲鳴を上げる。



悲鳴を上げさせるのは大抵決まった人物なのだが、今は置いておくとしよう。



現在の国木田の悩みの種はワカメ頭の同僚でも、扱いにくい新人でもなく、目の前にいる20代くらいの非常に目を引く見目麗しい青年であった。



先程から何やらショーウィンドウに鼻が付きそうなほど顔を近づけ熱心に店内を見ている。



彼は誰か。


端的に言おう。




─────迷子である。

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