Ventende person ページ5
·
·
「恋する乙女は何時見ても可愛らしいですねえ····。羨ましいです」
街を歩きながらリンはしみじみと呟いた。
隣を歩いていた織田はそんなリンに訊ねる。
「恋をしたことがないのか?」
「恋をしたことは····そうですね、ありません」
「そうなのか」
リンは、はい、と頷く。
「胸が苦しくなるような、甘いけれど時には苦くなるような、その人の事しか頭に入らなくなるような、そんな恋をした事がありません」
リンの赤毛がさらりと肩から落ちる。
そして何かを懐かしむように目を細め、微笑んだ。
「昔お仕えしておりましたご令嬢が迚も可愛らしいお方でした。お嬢様は執事と恋に落ちてしまい、窓から屋敷を飛び出したのですよ」
「それは凄いな···」
「はい。けれどそれまでお嬢様は自分の想いにお気付きにならず···こちらが随分とやきもきしたものです」
リンは可笑しそうにクスクスと笑う。
でも、とリンは何か愛おしいものを見るかのように前を見つめる。ハッとするほど美しかった。
「そんなお嬢様が、自覚された途端、屋敷を飛び出してしまう····恋とはそれ程の力を持つものなのだと、羨ましく思いました。私には、そんな経験1度もないから···」
リンはそっと目を伏せる。
長い睫毛が影を落とした。
眉を下げ、まるで今にも泣きだしそうな表情を浮かべる。
「何時か、私にも現れるでしょうか····? もし、このままずっと、現れなければ、私は_____」
____泡になって消えてしまうかもしれません。
織田は思わず手を伸ばす。
だが、それは自分の役目ではないと思いとどまった。
「何時かきっと現れる。だから、大丈夫だ」
何の根拠もない言葉。
だが、リンは嬉しそうに笑った。
「はい、もう少し待ってみます!」
184人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
涼風梓(プロフ) - リ”ン”ち”ゃぁん!(とても野太い声)え、マジ聖母様…可愛い…レイ君と有島おにーさんのいもーとさんが出たときめっちゃ発狂しました有り難う御座います((これからも体を壊さない程度に自分のペースで更新頑張ってください! (2019年5月22日 16時) (レス) id: b666f93d0b (このIDを非表示/違反報告)
kanixtuto(プロフ) - うおぉぉぉぉ!有島の妹!レンくんたちが出てただでさえ嬉しいのにこういう作品ほんと好きです (2019年5月8日 19時) (レス) id: bec7d7e682 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ味の白兎 - 2人のキャラ設定とても面白いですね!弟君のキャラとか好きです! (2019年3月28日 18時) (レス) id: 8cc010c4ca (このIDを非表示/違反報告)
チョコ味の白兎 - 好きです!こういう世界観!続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2019年3月28日 18時) (レス) id: 8cc010c4ca (このIDを非表示/違反報告)
鈴カステラ(プロフ) - グリム兄弟かむおん!見てみたいです! (2019年3月28日 18時) (レス) id: 465dee071e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:灯 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年3月24日 12時