【文スト】どうも、配達のおにーさんです▽第二部▽【男主】

配達十六:今だけは ページ19

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「─────先生」


あれから数日。
有島は無事目を覚まし、念のため入院をしていたが、何ともなかったため、今日、退院したのだった。



「やあ、治。どうしたの？」



「マフィアは辞めるのでしょう？」



太宰は頸を傾げ、訊ねた。
有島は曖昧に笑い、うーん、そうだねえ、と言葉を濁す。



「今はマフィアに居ても何も問題ないんだよなあ。精神も安定しているしね。マフィアにも大切な人たちが居るから、離れがたい」



だけど、と有島は続ける。



「矢っ張り、配達の仕事をしているときの自分が好きなんだ。


だから、




─────マフィアは辞める」



又た配達員に戻るよ。


有島はにっこりと笑った。
そして太宰に歩み寄り、そっとその頬に触れる。




「ごめんね、治。不甲斐ないお兄ちゃんで」



「私達の兄になるつもりはないのでしょう？」



「今だけ、今だけはお兄ちゃん」



「治」




一筋の風が吹いた。





「──────俺はお前を追い詰めただろう。


お前の瞳にはまだ闇がある。


俺も完全には消えてないけど、お前よりは幾分かましになってしまった。


なってしまった、なんて云ったら怒られちゃうな。


俺がお前を救えるかは、判らない。



だけど、これだけは覚えておいてほしい。






─────俺はお前の味方だよ」

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