配達十四:赤い科学者、白い機械 ページ15
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有島は夢を見ていた。
娼館を出る前の記憶。
珍しい女の客だった。
何故か二人居て、迚も珍しいと思ったのを覚えている。
一人は赤髪に赤いルビィのように美しい瞳の今まで見た女の中でも飛び抜けて美しい女だった。
左目は包帯で覆われており、頸には縄の痕があった。
大きく開いた胸元には刺青がある。
それさえも女の美しさを際立たせた。
もう一人も女に負けず劣らずの美しさを持っていた。
白髪の女。まるで人形のように迚も美しいが、その表情は冷たく、何処か無機質だった。
赤髪の女は有島に告げた。
「小僧、此処から逃げ出したいか?」
血のように赤い瞳が有島を捕らえた。
まるで嘘をつかせないようなその瞳に有島は僅かに身を震わせる。
「逃げたい、」
その言葉に女は満足げに頷き、白髪の女の方を振り返った。
「判っているね?」
「はい。御主人様」
その女の声は顔と同様、とても無機質だった。
まるで機械みたいだ。
白髪の女が消えて暫くすると、怒号や叫び声が飛び交い始めた。
有島は訳が判らず女を見る。
女はゆるりと口角を上げ、云った。
「あれが囮になっている隙に逃げろ。良いな?」
「どうして、」
「さて⋅⋅⋅⋅⋅⋅どうしてかな。まあ、気が向いたとでも云っておこう」
逃げろ。と女は云った。
有無を云わさぬその物云いに気がつけば有島は駆け出していた。
「此処を出れば貴方様は自由です」
白髪の女は門の前に立っていた。
「どうぞ」
有島は云われるがままにその門をくぐった。
──────自由、だ。
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レン(プロフ) - 完結おめでとう!!恩田ちゃんまで出していただいて本当にありがとう!!大好きな作品でした!!!これからも頑張れ!!!! (2019年2月28日 18時) (レス) id: c18a6b747d (このIDを非表示/違反報告)
姫歌(プロフ) - 完結おめでとう (2019年2月28日 0時) (レス) id: d8a4d97043 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - おにーさん好き… (2019年2月27日 20時) (レス) id: e36d1c7298 (このIDを非表示/違反報告)
海月イオ - とりあえず、全話読んで思いました。めっちゃ面白い!神作!太宰三兄弟やべぇ。 (2019年2月27日 18時) (レス) id: 9edaa1d068 (このIDを非表示/違反報告)
−こま−(プロフ) - テストに有島おにーさん出て来ました!迷わず、選んだけど間違えました!悔いはありません。後悔もありません。笑 (2019年2月24日 17時) (レス) id: 43a4a6fc1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nyam83542/
作成日時:2019年2月16日 17時