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配達二五:お兄さん、壊れている ページ31











有島は又た地下牢に向かっていた。
当たり前のように牢の中に入ろうとする有島を看守が止めようとする。


だが、有島は笑顔のまま、看守に云い放った。



「五月蝿いな。黙れよ。私に指図をするな。出ていけ、今すぐ」



尋常ではない殺気に看守はごくりと喉を鳴らす。
そして、大人しく出ていった。

有島はそれを見届け、すぐに口角の力を抜き、真顔になる。




「どうした? いつもと違う」




「レイくん、ねえ、私はどうすれば良いんだろう? 自分が恐ろしくて堪らない」



有島は両手で顔を覆う。




「ありしま、」



「笑顔でなければ駄目なんだ。絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に!! 笑顔でなければ、だって私は、私の周りには、敵しかいないのだから⋅⋅⋅⋅⋅⋅。壊さないといけないんだ。壊して、壊して、壊して、壊して、全部、壊すんだ。壊さなければならないんだ。嗚呼、何故? 何故、壊さなければならない? 何故、笑顔でなければならない? 何故、何故、何故? 敵しか居ないから? だったら敵はなんだ? 敵組織か? 首領か? 幹部達か? それとも、私自身? ⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅私自身か⋅⋅⋅⋅⋅⋅。はははっ、救いようがないな。⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅御願いだ、誰か私を殺してくれ。此の世界から、此の世界から、逃れる術はそれしかないんだ。此の、酸化する世界から⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅、私はっ⋅⋅⋅⋅⋅⋅!! 頼むよ、私を殺してくれ⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅!!」



牢の中でパシン、という音が響き渡った。
レイが有島の頬を叩いた音だった。

有島は呆然とする。



「目はさめたか?」


頬を押さえながら有島はレイを見た。
相変わらずの無表情。だが、僅かに心配と怒りのようなものが浮かんでいるように思えた。


「しんだら、俺がおまえを殺すからな」



「っ、はは、れいくん、死んだらころせないよ?」


乾いた笑みを漏らした有島の瞳からは透明な液体が零れ落ちる。
それは涙だった。


「私は、"俺"は、死なないよ。死ねないんだ。死んだらレイくんにも会えなくなってしまうしね」


涙を流したまま、有島は笑う。
それは迚も綺麗な笑顔だった。

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もこ(プロフ) - 初コメ失礼します!私男主の愛され大好物なので嬉しいです!文ストのキャラ全員推しなので嬉しいです!更新頑張ってください! (5月22日 13時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
水耶(プロフ) - 北森くん出てきてくれてめっちゃ嬉しかった!隼ってでてもしかしてって思ったけど、、灯さん天才すぎます!感謝しかない! (2023年1月17日 15時) (レス) @page20 id: 4c6b81a587 (このIDを非表示/違反報告)
野良神@アホの子症候群(プロフ) - 一部完結おめでとうございます! (2019年2月16日 15時) (レス) id: 98ee09b097 (このIDを非表示/違反報告)
姫歌(プロフ) - ありしまま……………好き。一部完結おめでとう! (2019年2月16日 15時) (レス) id: d8a4d97043 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - あああああ愛してるありしまんまみーや……今日の学校のクソさが全て洗い流された好き…… (2019年2月16日 13時) (レス) id: c18a6b747d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nyam83542/  
作成日時:2019年2月4日 21時

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