【キ.ヨ】嫌いな人が好きな人【実.況.者】

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キヨ君にイラつく、と言われて一週間。嫌がらせも何も変わらず、いつも通り。
ただ一つだけ、いつも通りじゃないことが起きた。
私とキヨ君が日直になった。しかも今日に限って仕事が多い。二人でやらなければ終わらないくらいに。
案の定、キヨ君が仕事をさぼったせいで、私は放課後も残って仕事をやっている。

『終わんない…』

シャーペンを動かす手を止め、椅子の背もたれに体重をかける。
まだまだ帰ることはできなさそうだ。今日は見たいテレビがあったのに…。
もうひと頑張りしよう、とシャーペンを握り直した。
すると突然、教室の扉が開いた。ビックリして扉に目を向ける。

そこにはキヨ君がいた。部活の、サッカー部のユニフォームのままで。
目を見開いたまま固まっている。

私は扉の音にビックリしたけど、キヨ君は何にビックリしてるんだろう？

まあいいか、と仕事に戻る。休んでいる暇はない。
ちら、とキヨ君を見てみると、まだ扉の前から動いてない。ちょっとばつが悪そうな感じ？
気にせず作業を進めるけど、キヨ君はいつまでたっても動こうとしない。
二人とも何も喋らないから、私がシャーペンで文字を書く音だけが響いている。
沈黙。
…気まずい。

『用があるなら、早くしてくれないかな…』
おずおずと、だけども言ってみた。何故か口ごもるキヨ君。
何か言いたげだけど、なんだろう？

「…わーったよ」

小さな声で呟いて、自分の机に向かっていった。忘れ物かな？
ちょっと気になるけど、とりあえずシャーペンを動かす。
キヨ君が歩いていった気配がする。人の気配なんて感じたことないんだけど…、何でだろ？
…って

『！？』

なに！？
キヨ君が突然私の前の席に横向きに座った。顔はなんか、照れてるような、不貞腐れてるような？
無言だったから驚いた。

『…なに？』
「…手伝ってもいいけど。何、残ってんの」

開いた口が塞がらないとはこの事か。あのキヨ君が。

『え…っと、ここに担任の先生の名前を書くの』
「アイツの名前かよ…。チッ、これくらい自分でやれよ教師の癖に」

文句を言いながらやってくれている。私はまだ今の状況が理解できてない。
なんで、どうして。あの時と同じ言葉が、頭の中をぐるぐる回りだした。

キヨ君のおかげで仕事も終わって、鍵を閉めて教室を出る。外はほんのり薄暗い。
結局、キヨ君は部活に帰らずに、私の隣にいる。

「ちょっと下駄箱で待ってろ」

それだけ言って、キヨ君は走り出した。

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