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「返した」
「…え？」
目を丸くする宮舘くん。
そんな彼に私は全力の笑顔で言い放った。
「先輩に返してきた。全部」
全部、全部だ。
先輩に対する想いや、時間や、愛情全てを。
強くそう言えば宮舘くんは優しく笑ってくれて。
「そっか。頑張ったね」
そっと手が伸びてきた。
それは私の頭を撫でてくれて。
男らしい大きな手は優しく、暖かく。
一生懸命堪えてたのに。
手が震えだしてしまい、目頭が熱くなる。
「本当はね、悠先輩のこと信じたかったんだ。やっぱり心のどこかで先輩を想う気持ちがあったの。でももう、それも無くなっちゃった」
あの日、私が先輩を好きだと思った日。
一目惚れしたその日の彼はもういない。
「ありがとう宮舘くん。たくさん助けられちゃったね」
声が震えてしまった。
けど、絶対に泣いてやるもんかと無理やり笑顔を作った。
すると彼も笑ってくれて。
「何もしてないから」
ゆっくりと頭から手が離れていった。
その代わりに宮舘くんは私の手を握ってくれて、ギュッと恋人繋ぎにそれは変わる。
「今日一日泣かずに頑張れそう？」
「…うん、頑張る」
「そうだね」
目の前の彼は小さな声で頷いてくれた。
笑顔も仕草も言葉も全てが優しくて。
こんなに甘えていいのかな、と。
「そろそろクラスのやつら来るから準備しようか」
そっと離れていった右手。
じーんと熱くなった胸を押さえながら、もう一度笑顔を作ったのだった。
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作者名：ガム | 作成日時：2022年9月25日 15時
