ハウリングオーケストラ(BLU) ページ13
「Aさんやっぱり最近変ですよ?何かありました?」
辛気臭い辛気臭い。
そりゃこんな顔してたらバレるよねー。
だって失くして初めて気づいたんだもん。
私っていのちゃんが好きだったんだなって。
友達として好きだから体も許したんだと思ってたらそれはただの錯覚だった。
「さつきちゃんは自分がバカだなーって思うことある?」
「えーそんなのありすぎて困るくらいです。コンビニで端数の小銭を出そうと思ったら、さつき計算苦手だから出した小銭の倍以上の小銭が返ってきちゃったり。あとはぁ」
「わかったわかった!もういいよ!さつきちゃんってほんと天然だね」
「そんなことないですよー!」
そういう類いのバカ話を聞きたかったんじゃないんだけど…
天然って言われて喜ぶって、確実に養殖だろ。
本気の天然は必死に否定するもんなんだぜ。
いつもならこんなさつきちゃんも可愛い後輩だなって思えるのに。
私はかなり荒んでるらしかった。
久しぶりにいのちゃんの姿を見たのはその日の夜だった。
あれ、なんでこの駅にいるの?
迎えに来てくれたとか?なんて都合のいいようにはまるで思えなかった。
いのちゃんは笑って手を振ってる。
そのいのちゃんに駆け寄る小柄な女の子。
可愛くて、嬉しそうににこにこ笑ってて
女の私から見ても守ってあげたくなるような。
いのちゃんにぴったりだね。
なにも職場の最寄り駅で待ち合わせしなくてもよくない?
今までの行動を神様に咎められてる気分だった。
.
.
「あれ?!」
「とめちゃん!久しぶり!」
おおー元気だった?って八重歯をのぞかせて笑うとめちゃんこと、八乙女くん。
とめちゃんは大学の友達。
で、とめちゃんの友達がいのちゃん。
だから今はとめちゃんとの再会もあんまり喜べない。
「最近どう?その、いのちゃんとは…」
「いのちゃん?社会人になってシェアは解消したよ!」
うん、うん。それは知ってるよ。
「でも飯食いによく来てる!あいかわらずだよ。昨日も一昨日も来たかな」
「え!そうなの?」
「今日は逆に作って待っててくれてるはず」
「は?!いのちゃん料理できないのに?!」
「Aちゃんはまだいのちゃんの事すき?」
「…………え、ちょっと」
「隠すなって!知ってるから」
にやつく顔がうっとおしい。
あーあーやだやだこういう人。
「いのちゃん彼女できたっぽいね…」
私の言葉に思案顔で目を左右に動かすとめちゃん。
「ちょい話せる?」
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作者名:もぶ | 作成日時:2017年1月24日 15時