#05 ページ6
1年のうち359日は一緒に寝る。
それ以外は私が実家に帰ったり、行きたくもない社員旅行や飲み会。
「中島が抜けるなんて珍しいね」
「なにそれ。失礼じゃない？」
「あれだけお酒好きなのに。明日は槍が降るよ」
「はいはい」
同期とはどうも居心地がいいもの。
無理に優しさを押し付けなきゃいけない後輩や必死に口角を意識しながら話さなきゃならない先輩とは違う。
「あのさ」
「ん、」
「お前ん家って、入社から変わってない？」
「うん？」
「…俺、歓迎会で送ってったじゃん」
「そだっけ？でも部屋は変わらないよ」
何を言いたいんだろう。
あ、このまま送ってくれるとか？
だから場所確認かな？
もう既にうちの沿線を通る駅にたどり着いてる。
たしか中島は違う線だったはずで。
神経質なのに案外ガサツで優柔不断、っていう矛盾だらけのよく分からない中島のことだからきっと気分なんだろうけど。
「ありがと、でもここまででいいよ」
「いや、送るよ」
「でもここからだと逆じゃない？」
「…」
「中島？」
「俺最近引っ越したんだ。〇〇って駅のそばで」
「あの近辺って再開発で地価あがってるんじゃなかった？」
「ま、それくらいのお給金は貰ってるんで」
「それただの自慢話じゃん」
それでも鼻につかないのが中島のいいところでもある。
努力家だし、同期の中でもTheエリート街道って感じの異動をしてる。
「私ももう少し会社から近いとこに引っ越したいな」
「…」
地下鉄が滑り込んできた。
強烈な風に煽られる私の前に庇うように立ってくれる中島はスマートの一言に尽きる。
顔も良くて仕事もできてスマートって…これは間違いなく爆モテですね。
「とりあえず沿線だし、送る」
「ありがと」
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作者名：もぶ | 作成日時：2020年2月3日 12時
