追憶#14 ページ17
いつだったか「全然生活感ない」と会社の後輩に言われたっけ。
久しぶりにマンションに帰った俺はリビングをぐるりと見渡してみた。
やっぱり生活感ってのがいまいちよくわからないけど、Aちゃんの部屋に比べたらだいぶ物が少ないしこんなんで生活してたのかって自分で吃驚した。
とりあえずティ〇ァールの電気ケトルは買おう。
あとは掃除機。自走式は使いやすかったな。Aちゃんはどこのメーカーのやつだっけ。
バスタオルも。今までそんなにこだわってなかったけど、うちのやつよりAちゃん家のバスタオルの方がふわふわで気持ちいい。
あとね、ペパーミントの紅茶。思ったより飲みやすくてスッキリ眠れるんだよね。
_______________
「…ちゃん。ねぇ、話聞いてる？」
「え！あ、うん。聞いてる聞いてる」
自分のマンションに帰ってから、ちょこちょこインテリアにも興味を持ち始めた俺は暇があればIKE〇のホームページを眺めている。
「(ぜってー聞いてないし)今日知念も来たいって言ってるんだけどいいよね？」
「……」
「おーい」
「大ちゃん、俺帰るわ」
「はい？」
「おれ、これからようじあるんだった」
「なにそのカタコトな日本語。知念とケンカでもした？珍しいね。あんなにベタベタしてたくせに」
「そんなことないし。ベタベタ度でいったら大ちゃんの方がベタベタしてると思うけど」
「そ？それはなんか嬉しいけど。でもさ、…なんか最近やたら知念が伊野尾ちゃんのこと聞いてくんだよね」
知念が気にすることでもないのに。
元はと言えば俺が全部悪いんだし。
何度かコンタクトをとろうと試みている知念をひらりと華麗に交わしている俺。
でも大ちゃんまで使うとはさすが知念だなぁと苦笑いした。
たしかに今日の大ちゃん、誘い方がいつもよりも少しだけ強引だったな。
違和感はあったんだけど…やっぱり来なければ良かったかも。
「ごめん大ちゃん。そういうことなら俺もう…」
帰るわ、とテーブルに手をついて中途半端に持ち上げた俺の腰に細い腕が巻きついた。
「Aが！結婚するかもしれない！」
振り返ると息をあげて必死の顔の知念。
またまたそんなご冗談を……なんて言える雰囲気じゃない。
「〇〇ホテルの最上階っ…ラウンジ、早く！」
「でも」
大ちゃんは戸惑う俺を見上げて笑った。
「行かなくて後悔するより行って後悔しなよ」
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作者名：もぶ | 作成日時：2020年2月3日 12時
