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「…圭人くん、ありがと」
「んん？なんのこと？」
「私の独り言、聞いてくれてありがと」
「圭人は月を見てただけだもん。お礼言われるようなことしてないよ」
これではっきりした。
思ってること全部全部吐き出して理解できた。
私はすぐにでもこの家から出ていくべきだってこと。
泣き腫らして重くなったまぶたの代償に私は本当の気持ちに気づいた。
「私まだ大貴のこと全然好きだったんだね。友達に戻ったフリして未練がましく縋り付いてたけど、それももうやめなきゃ」
「…」
「楽しかった、幸せだった」
「…」
「でももう、ちゃんとお別れ…」
「…」
「…？圭人くん？」
さっきから圭人くんの反応がない。
寝ちゃったのかも。
さすがにベランダで寝たら風邪ひいちゃうし。
ここから隣のベランダ覗けるかなーって手すりに手を掛けたら…
ぴんぽーん
「大貴？」
未だ真っ暗なリビングを抜けてそっと鍵を開ける。
「こんばんは。こんな遅くに来ちゃってごめん」
「え？」
さっきそこでさよならして、今まで一緒に別々のベランダにいた圭人くん。
眉毛が下がってる。
「圭人ね、今ね、2階のベランダで月を見てたんだけど」
「…」
「まんまるより少しだけ欠けてて、なんかもやもやーってしてて、幻想的？とにかく綺麗な月でさ」
「うん」
「見てたらなんでか急に寂しくなっちゃって…。
Aちゃんさえよければ、圭人の部屋で一緒に月を見ない？」
「…え」
「有岡くんまだ帰ってきてないよね？
少しでいいからホームシックな圭人のそばにいてくれないかな」
瞳がキラキラってピカピカに光ってて、それがさっきまで見てた月にそっくりだったから
私は思わず圭人くんの手を取った。
____________
なにこの女！私こんなんじゃない！イライラする！
って受け取ってもらえたらそれは大成功。
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作者名：もぶ | 作成日時：2018年4月8日 15時
