突撃！となりのバンドマン(Keito.O) (ページ6)

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構いたがりと構ってもらいたがりページ6

お待たせいたしましたー、と運ばれてきたのは生ビール2つとウーロン茶それからお通しのサラダ。

隣は大貴。
向かいは圭人くん。

終演後、ライブハウスを出ようとしたら出口付近のスタッフに呼び止められあれよあれよと控室に通される私たち。

「Aちゃん！ほんとに来てくれたの？！」

ライヴ特有のハイテンションでもって圭人くんが抱きついてきた。

普段なら暑苦しいと感じる汗すらも爽やかってどんな人間だよ。

そこからかくかくしかじか、あんなやりとりやこんなやりとりがあって3人でご飯を食べに来たんだけど。

「すっげかっこよかった！」

「ありがと！」

「ねえ、あんな本格的なバンドであんなに人気もあって声かからないの？」

「あー、なんか一応時々事務所の人？プロデュースさせてくれみたいな人が来るみたい。でも方針が違ったり、なんか上手くいかないんだって」

「へえ。難しいのな」

「俺よくわかんないけど…『うれせん』？それだけはごめんだってメンバー怒ってたし」

「『売れ線』かあ。ほんとにそんな話があるんだね」

少しずつ運ばれてくる料理はいつの間にかテーブルいっぱいになって置き場がない。

2人の会話を聞きながらサラダに手を伸ばす。

私はちょっとこういう空気感は苦手で。
話を聞いてるだけでなんとなく入っていけないっていうか。

だから大貴の友達の輪にも入れなかった。

「Aちゃんおかわりは？違うやつ頼む？」

スマートにドリンクメニューを渡してきた圭人くんにびっくりして少しむせた。

大貴はどうする？って横を見ると忽然と退席しててこれまたびっくり。

気まずくなってメニューに顔を埋めた。

「あ、今トイレ行ったよ。次はハイボールにするって」

「あ、そうなんだ。じゃあ私もハイボールで…」

「ジンジャーもあるけど、普通のハイボールでいいの？」

「うん」

「すみませーん！！」

人見知りとか話せないとかじゃないんだけど、最初の出だしでいつも躓く私。
そんな話しかけづらい部類に入る私を気にかけてくれる優しい紳士。

年下にばっかり気使わせちゃだめだよね…
なにを話そう。
なにか話題を、…

「仲良しのカップルで羨ましいよ」

「え？」

「有岡くんと」

「ああ…」

それは違うの。

大貴とは、もう違うの。

喉に何か詰まって声が出てこない。