05 ページ43
「だってさ、ただのわがままじゃんそれ！イヤイヤ期の子供みたい」
結婚してくれなきゃやだやだやだーって。
嬉しいことなんだけど笑っちゃう。
「…だって、圭人たち海外行くんだよ？寂しくないの？」
やっぱりそれか。
来春、初めて長期の海外ツアーが決まってるんだけど。
しょんぼりと肩を落とす圭人の頭を優しく撫でた。
あの頃から変わらない。
何事にも一生懸命だからこそ、私は不安なんてなかった。
でも、圭人はきっとずっと不安だったんだね。
はっきり伝えられなくてごめん。
「私と、家族になってください」
# 圭人__________
だって俺ら、もうすぐ4年だよね？
飽きもせずに4年一緒にいてさ、ずいぶんと落ち着いてきたって思う。
アレ欲しいって言ってもアレがなんなのか伝わるし、空になったグラスにいち早く気づいて注いでくれる。
何を言わなくてもわかる距離感。
それがすごく嬉しいことなのにすごく辛い。
俺らの関係性はあれから何ひとつ変わってないんだから。
「次の曲はアルバムの中でも壮大なバラードにしたくて。5周年じゃん？でツアーも長くまわることになるし。アンコール前にもっていきたいんだよね。サブリード曲くらいの位置付けで」
そんな会議が行われたのはもう何か月前？
焦れば焦るほどサブリードならぬミスリード。
全然まとまらないし不協和音で気持ち悪く感じる。
「圭人」
「ん？ごめん、今ちょっと手が離せないかな」
隣の部屋でMIXしてるhikaruくんが控えめなノックをして入ってきた。
髪の毛ぼさぼさでのそのそとこっちに向かってくるhikaruくんはステージの上のキラキラな彼とは正反対。
「…なに？」
「いや、」
歯切れが悪いのもいつもの事。
テレビの時ははきはきしてるけど基本的にはこうだ。
「うん、ごめん。なんか上手く作れない」
「そっか」
傷んだ髪をわしゃわしゃさせながらUターンして部屋を出る後ろ姿に苦笑い。
なに、要件それだけ？
ふんわりふんわり、洗濯物の香りがしてきた。
Aちゃんが洗濯物片付けにきてくれたのかな。
こうなると生活力がまるでゼロになる。
全部Aちゃん任せで申し訳ないなっていうのと、有難いのと。
付き合う前からライヴにはよく来てくれてたし(俺がパス渡してお願いしてたんだけど)
ご飯作りに来てくれたし(俺が合鍵渡したんだけど)
俺が一方的に甘えまくってる？
結婚なんて今更カッコつかないかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「有岡大貴」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もぶ | 作成日時：2018年4月8日 15時
