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「ねえhikaruくん、私そろそろ部屋に戻っていいかな」
「あー！！もう！！
ちっとは先をミスコシてんのかって聞いてるの！」
み、みす？
いよいよ意味がわからない。
「Aちゃん。悪いけどその部屋から出てってくんね？」
心臓がドキンと大きく波打った。
「私が、マイナスだから？」
「は？何言ってんの。今の状況がマイナスだろ。わっかんねーの？圭人がこんなに不調な理由も、バンドが今ぎくしゃくしてる理由も」
初耳だった。
ぎくしゃくしてたの？
私がこの前観たライヴでは全然そんなことなくて。
いつも通りかっこよくて楽しくて、ファンのみんなも大盛り上がりで。
「ちゃんと応えてやってよ」
「…」
「その部屋引き払って、一緒に住んじゃえよ」
何か言葉を言いたいのに、何も言えない。
喉が熱くなって詰まって痛くて。
涙がぽろぽろ止まらない。
「もうそろそろさ、結婚、ミスコシてやってよ」
なんで…
私たちのこと反対してたんじゃないの？
私が料理作って持っていくのも嫌がってたじゃん。
服のボタンが取れかかってると「そんなことも管理できねーの」って鼻で笑ったじゃん。
(指摘が細かすぎるわ！小姑か！ってイラついたもん)
圭人が熱出したら「昨日遅くまで一緒にいたんでしょ」って風邪を私のせいだって決めつけてくるし。
その度にマイナスにならないように、って頑張ってきた。
結婚は意識してなかったけど、もしできるならhikaruくんは絶対に反対だろうなって思ってて。
それなのに、それなのに、ひどい。
なんでhikaruくんからプロポーズされなきゃいけないの？
結婚してやってよって。
もう泣いてることを隠せないくらいに嗚咽。
「…今まで意地悪してごめんな。でもやっぱさ、圭人にはAちゃんなんだわ。気持ち的には家族でしょ。家族が離れ離れで住んでるって…単身赴任じゃねんだからさ。隣りに住んでんだからさ」
「うん、うん…」
「精神的にも、なんつーの？全体的にも？ちょっとわかんねーけど、とにかく圭人のこと全部まるっと支えてやってくんねーかな」
結婚できなくてもいい。
音楽もファンもいるのに、私を選んで欲しいなんて言えない。
そう思ってた。
1番遠くの席からいつも圭人を、ステージを見つめてた。
私はバンドにとってマイナスになっちゃいけないって。
でもそれを全部こみこみでバンドリーダーのhikaruくんが「結婚」って言ってくれたんだ。
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作者名：もぶ | 作成日時：2018年4月8日 15時
