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圭人と私の二人分の洗濯物を取り入れてもう部屋に戻ろうと窓に手をかけた時
「…Aちゃんは今日の焼肉こねーの？」
かちっ、ライターの音が聞こえた。
ふーっと煙を吐き出す呼吸音とともにまた紫色の煙がぽわぽわ漂ってきて私は顔を顰めた。
「行かない。岡本さんが缶詰めだから」
「ははっ、そーね」
ふー…ぽわぽわー
hikaruくんは電子タバコは使わないらしい。
なんでも、『ロッカーじゃねー』の一点張り。
副流煙とかさ、副流煙とかさ、副流煙とかさ…
私的にさ少しでも害が少ない方にして欲しいんだけど。
まぁhikaruくんもhikaruくんでストレスもあるんだろうしね。
最近になって(いい意味で)バカなのが少しずつバレ始めてて。
音楽番組だけじゃなくてちょっとしたバラエティ番組にも出てるから。
大目に見てあげよう。
「そっちはどうなの歌詞」
「んー。なんとも。とりあえずほら、曲が出来てこないとさ」
「もー。圭人の前で絶対言わないでよ」
「そんなんわかってるし」
来週Recだっていう曲がまだ出来上がらない。
今回は相当煮詰まってるらしくて。
発売日がもう決まっちゃってるからスケジュールに少しでも遅れが出るとそれだけみんなの負担になる。
「…ねー」
まだ続きが何かあるの？
洗濯物のバスケットを抱えながら私も苦笑い。
「おたくら、これからどーすんの」
「へ？」
「こうしてずっと『おとなりさん』続けてくの？」
所属事務所が借り上げているこのフロア。
一般人は住めないんだけど特別に私も住まわせてもらってる。
自分が住んでるフロアにしかエレベーターは止まらないし、防音だし、部屋数余るくらいだし、マンションの中にジムが併用されてたり、エントランスには24時間コンシェルジュがいたりと…
一般人の女が住めないようなとこなんだけど。
特別の特別の特別に。
それは圭人のわがままで。
どうしても『おとなりさん』がいいから、家賃は少し助けるし隣りに住んでほしい。とお願いされたのは付き合うことになってすぐのこと。
「それを望んでるのは圭人なんですけど」
「んー、それはどうかな」
「え？」
「いや、俺はさこんなんでもリーダーだし？バンドを守っていかなきゃなんねーから。だめなんだけどさ」
黙々と聞いてるけど頭の中は「どゆこと？」状態。
洗濯物は重いし手も痺れてきた。
「本当はだめなんだよ？だめだってわかってんだけど」
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作者名：もぶ | 作成日時：2018年4月8日 15時
