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「ちょくちょくここには帰ってきてた。でも、Aちゃんと会うのはちょっと怖くて…Aちゃんが仕事で留守だろうなって時に」
「そうだったんだ」
確かに生活感ない割にタオルもあるみたいだし。
妙に納得してしまった。
「曲作りが上手くいかなくなるとさ、ここに来たくなるんだ」
カーテンのない窓から月が見えた。
夜通し話したあの日とは違って細くて小さい月。
あの日はスーパーのタイムセールは嫌だ、みたいな話をしたんだっけ。
それから、お互いの家族のこととか、ああそうだ、妙に人懐っこい野良猫がいて、その猫が共通認識で嬉しかったんだった。
そんなに昔の事じゃないけど、すごく昔の事に感じる。
「あの時、俺が言ったことは全部ホントだよ」
「あの時…」
多分、圭人もあの日のことを思い出してた。
「妹が欲しかったっていうのも、Aちゃんがおとなりさんでいてくれてよかったって思ったのも、全部全部ホント」
胸がぎゅっとなる。
そう、私たちは家族みたいなものだから。
こんな感情を持ってちゃだめなの。
家族として、きちんと付かず離れずの所から応援しなきゃ。
「全部ホントなんだけど間違ってた」
圭人の方を見れなくて、月を見つめてたからいきなり腕を掴まれたことに驚いた。
一瞬で呼吸の仕方を忘れる。
目が合った圭人は圭人だけど圭人じゃないような。
ステージの上で演奏してる圭人みたいだった。
「Aちゃんだから、そう思えたんだよ。他の人だったらこんなこと思わない。
いつもライヴ見に来て欲しいとか俺が好きな料理作って欲しいだとか四六時中触ってたいだとか、妹にしたいお姉ちゃんでいて欲しい家族になりたいだとか」
「え、まって」
「そう、俺はAちゃんと家族になりたかったの。お互いがお互いに寄りかかれるような、気持ちいいぬるま湯みたいな、それが当たり前みたいになれれば1番」
「圭人、だからちょっと」
「まどろっこしい？結婚しよう、Aちゃんが好きなの」
なんでこうなった？
彼とはただのおとなりさん。
セッションの手伝いをしてあげた。
ライヴに呼んでもらった。
私に曲を書いてくれた。
家を行き来するようになった。
ご飯を持って行ったり、呼ばれれば車で迎えに行ったり、
食事に誘ってくれたり、ふかふかの布団を用意してくれてパジャマパーティーしたり
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作者名：もぶ | 作成日時：2018年4月8日 15時
