04#Daiki ページ35
衝撃的な、何か鈍器で頭から足先までぼこぼこに殴られた気分だった。
それくらい圭人から聞くAの話に頭が追いつけない。
俺元々そんなに頭の回転数、早くない。
マイペースって言われるし。
一度にたくさんのことできない。
後先考えずに言っちゃう癖もある。
…最近はそんなことも少なくなってきたけどこれは友達によく言われることで。
でもAのことは俺が一番よく知ってると思ってた。
なのに圭人が見てるAと俺が見てたAとはまるで別人。
これはもう俺の完敗。
「Aちゃんって本当にかわいいよ」
うん、Aは可愛い。
けど…俺はそんな可愛いAを知らなかった。
ホラー映画がだめなところ。
怖すぎると思わず笑っちゃうところ。
スプラッター系は案外平気なところ。
卵焼きは甘い卵焼きなところ。
実は寝起きが悪いところ。
今圭人から数分間話を聞いただけでこんなにも俺が知らないAばっかり。
いつも俺がホラゲーやってるの横で見てんじゃん。
笑いながら「大貴まじ下手」って。(あれ、怖がってたのか)
お弁当に詰めてくれる卵焼きはいつも塩味。たまに小さいウインナーが真ん中に入ってるような惣菜的なあれで。
寝起き悪いところも知らない。
俺の方が寝起き悪いってこともあるんだろうけど。
朝弱いのに、Aの仕事が休みの日でも俺のお弁当詰めてくれてたんだ。
頑張ってくれてた。
「そういればこれ、この間忘れてったの。渡しといてもらえる？」
手渡されたのは石が入った初めて見るピアス。
「わかった」
「疲れてそうだったから圭人の膝枕で休んでもらったんだ。筋肉が痛くて寝れないって笑ってたけど」
「…男に膝枕されたって嬉しくないだろー」
「Aちゃんは疲れがとれたって言ってくれたよ！」
「それ絶対社交辞令。Aも圭人にあまあまだな」
「えー」
そうやって笑ってみせるけど、結構内心はぼろぼろで。
あー、もう俺が入れるスキマなんてないんだって実感した。
もしかしたらまだチャンスはあるんじゃねーか。
引き返せんじゃね？ってたかくくってた自分。
俺の考えの方があまあまだった。
ごめん、俺Aに無理させてた。
付き合ってた頃はわからなかったけど、圭人といるAがきっと自然体なんだ。
会場全体が熱気に包まれて、あの日の悔しかった記憶がよみがえってきた。
開演まであと10分。
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作者名：もぶ | 作成日時：2018年4月8日 15時
