突撃！となりのバンドマン(Keito.O) (ページ31)

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おでこに鈍い痛み。
じんわりと地味に涙が溜まった目で大貴を見上げた。

「ばーーーーーか。何流されてんだよ」

「へ？」

「なに？Aの気持ちってそんなもんだったの？」

何を言ってるの？なんでデコピンされたのかいよいよ意味が分からない。

なんで大貴が悲しい顔して笑ってるのか、
なんでこんなにもほっとしてる自分がいるのか。

「プラスとかマイナスとかいちいち気にすんなよ。俺と付き合ってた時だってAからしたらマイナスだったじゃん」

「そんなことないよ！」

「無理、してたんでしょ。無理して俺に合わせてたからしんどくなったんだし」

楽しかったよ。
しんどいことばっかりじゃない。

ご飯の時にスマホいじってばっかりとか、全然話聞いてくれないとか、わがままとか、友達優先とか、そもそも仕事の休みが合わないとか。
たしかにつらかった時もある。
精神的に不安定な時は私ばっかり大貴のこと好きみたいでしんどかったけど。

それよりも大貴が好きで好きで好きで好きで…ひたすら好きで突っ走ってきた。

「俺に気持ちなんて1ミリもないんだから、そこは『Yes』って頷いちゃいけないとこなんだよ。苦しくても流されちゃだめでしょーが。
わかる？Aは今圭人が好きなんだから！」

ガツンって、鈍器で殴られた感覚。

今までなんとなくぼんやりと大貴の声を聞いてたけど、それがいきなり真っすぐに頭に入ってきた。

「もしだめだったら、俺が話聞いてあげる。友達として、親友として」

くしゃくしゃっと髪を撫でられた。

大貴はちゃんと、私のこと見ててくれた。

素っ気なかったり、雑だったり、なんなら女友達といる方が笑ってたりするけど。

きっとそんなとこも、私に見せてくれてた隙なんだ。
誰でも見れるわけじゃない。

「ありがと」

「俺が言うのもアレだけど、幸せに、なってよ」

そこまで大きくないけど、男らしい手。

がっしりと握手をした。

これで、ちゃんと友達に戻れた。