brother？ ページ25
ピンポン
「圭人？今大丈夫？」
「…はーい。Aちゃんどうしたの？」
「これ、実家から大量に送ってきたんだけどよかったらもらって」
「ありがとー！なにこれ、ひつまぶしの、素？」
「そう。ひつまぶし！混ぜるだけでできる簡単なやつだから」
入って入って、手を引かれるままお邪魔する。
うちと一緒の部屋のはずなのに、左右で配置が変わると雰囲気が全然違う。
「あれから事務所の話ってどう？」
「ああ、なんとかなりそうだよ！この間の曲も好評みたいで」
"この間の"
"この間の"
"この間の"ライヴの時に配った曲、のこと。
せっかくいただいた曲だったけどあの日から私は聞けてない。
「そっかそっか。よかったね！なんか圭人が遠くにいっちゃいそう」
「えー、そうかな。全然遠くなんてないよ。今まで通りね」
…嘘。
ライヴハウスでギター弾いてる姿見た時からもう圭人は遠い存在だった。
私はあれから呼び捨てにするようになった。
頻繁に部屋を訪れるようになった。
時間が合えば一緒にご飯を食べるようになった。
圭人の部屋に私用のお箸とマグカップを置くようになった。
遊びに行くと私が好きなココアが出てくるようになった。
ただそれだけのことだけど、
それだけ圭人との距離は縮まって、また遠く感じる。
物理的に、精神的に。
「あ、この間シチューありがと。タッパ返すね」
指が触れて圭人の笑みが深くなる。
うん、可愛い。
可愛い可愛い、私の、弟。
「新しい曲もね、今書いてるんだ。曲名はまだないから『シチュー(仮)』ってつけてるの」
「えーなんで」
「だってね、Aちゃんのシチュー食べながら思いついたメロディーだったから！」
圭人の目の奥がいたずらっぽく歪んだ。
一歩近づいた距離に私はまた一歩下がって圭人と距離を取る。
「へぇー、どんな曲？スローな曲？優しい感じの？」
「なんでそう思うの？」
「シチューのイメージ」
話を続けながらキッチンに足を運んだ私。
マグカップにココアの粉末を入れる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「有岡大貴」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もぶ | 作成日時：2018年4月8日 15時
