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「圭人くん？」
「…Aちゃん」
「？」
「、早く帰ろっか」
「うん」
早くって言う割に圭人くんはやたらのんびりと歩く。
私も持つよって言っても譲らないスーパーの袋。
とりあえずお酒類やらジュースやらいろいろ買ったし重いはずなのに頑なに譲らない優しさ。
「Aちゃんさぁ」
「ん？」
「…ううん、ごめんなんでもないよ。しゃぶしゃぶ楽しみだね」
「うん」
「有岡くん帰ってきたら連絡ちょーだい」
「えなんで。一緒にうちで待ってようよ」
「…俺やることあるの忘れてたから」
思いっきり嘘ついた。
大貴も嘘をつくとすぐ分かるけど圭人くんもバレバレなんだな、ってでもそっとしとこう。
「わかった！じゃあ大貴帰ってきたら連絡するから」
連絡するから
連絡するから…
そう言って玄関で別れたことを一瞬にして後悔する。
「A」
「びっ…！！」
くりしたぁ
玄関を入ってすぐ、死にそうな顔をした大貴。
「おかえり…早かったね？」
「ああ、うん今日は。Aどこ行ってたの？」
「え、スーパーに」
「圭人と？」
「うん。なんか高級なお肉をもらったとかで…大貴？どした？」
よくちびちび言われるけど私もちびだし結構身長差はある方。
なのに大貴の方が小さく感じるのは気のせい？
私の肩を顎置きみたいにして、そっと服の裾を掴んだ大貴。
「なんで俺こんなに余裕ねーんだろ」
「ほんと、どうしたの？熱でもある？大貴最近丈夫だけどよく体調悪…」
「俺が具合わりーって言ったら、もう圭人と二人きりで会わない？」
かちゃ、って音がする。
忘れてたけどここは玄関で。
玄関入ってすぐ大貴に捕まって、そのままで。
だからかちゃ、って音は何も考えなくても玄関のドアしかありえなくて。
そこには眉毛を八の字に下げた圭人くんがスーパーの袋を下げていた。
「野菜は先に切った方がいいかなって思って…
Aちゃんまだ玄関にいるかなって…圭人勝手にドア開けちゃってごめんなさい」
もう、ほんと、泣きたい。
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作者名：もぶ | 作成日時：2018年4月8日 15時
