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ぴんぽーん
相変わらず間抜けなインターフォン。
宅配便の人はシャキッとしたピンポンが鳴るのに圭人くんが鳴らすと必ずこれ。
確認しなくてもわかる。
圭人くんだ。
ぴんぽーん
「おはよ」
「おはよ、昨日ぶりだね！」
「昨日は何も言わずに帰ってごめんね。パス出してくれてありがと」
「そうそう昨日なんだけどさ！打ち上げでビンゴ大会やったんだよ。そしたら高級なお肉当てたのね。だからしゃぶしゃぶしよ！」
ドドーンと目の前に広がるのはいい感じにさしが入ったお肉。
いかにも高級そうな箱に入っておすまし顔。
MA！JI！KA！
打ち上げでビンゴやるロックバンドってどうなの？
しかも景品がやたら豪華なのってなんなの？
的な考えに私の体は固まる。
「…あれ？もしかしてAちゃんお肉好きじゃない？」
「好きだよ！好きだけどでも」
今日は、大貴が帰ってきたらちゃんと話するって…
「とりあえずおじゃましまーす」
いつの間に私を追い越してとことことキッチンを右往左往してる圭人くん。
…これはもう何を言ってもだめだね？
明日にしてほしいとか、そういう提案したら泣きそうな顔で見つめられるのがオチだよね？
圭人くんが引っ越してきてこうして仲良く話ができるようになって日が浅いけど、結構濃密な時間を過ごしてるから。
断れば途端に尻尾が垂れ下がる圭人くんがまざまざと容易に想像できた。
はぁー、っと1度深いため息をついて覚悟を決めた。
しゃぶしゃぶなんて今までしてこなかったから、なんかそれらしい鍋がなくて。
色気がないけどホットプレートのちょっと深いやつを用意してみた。
「白菜とか必要？しゃぶしゃぶってなにすんの？」
「へ？」
「なんか俺いまいちしゃぶしゃぶよく分かんないかも」
そう笑いながら手に取ったのはアボカド。
しゃぶしゃぶでアボカド、は………今まで聞いたことないかな。
そっとアボカドをカゴにいれる圭人くんを横目でちらり。
「薄いお餅みたいなのがあって、それをしゃぶしゃぶしたり。あとはただのお湯じゃなくて豆乳とかにすれば締めにリゾットとか？」
「へぇーしゃぶしゃぶに締めがあるんだ」
「前にいった食べ放題のしゃぶしゃぶはそんなんだった、か…な？」
肩より少しだけ長い私の髪を左にまとめる圭人くん。
不意にそっと右側の首元を触られた。
触られた部分がドキドキして熱い。
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作者名：もぶ | 作成日時：2018年4月8日 15時
