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SEに乗って1人ずつ登場。
ドラム、ベース、
きゃー！！！
黄色い声で名前を叫ぶファンの子たち。
おとなりに住んでるからって気軽に話したり、ましてや抱きしめられるなんてあってはならない遠い存在。
そんな気がした。
いつの間にか曲が始まっていて、会場の熱気も上がってくる。
私だけひとり、ぽつんと
会場に取り残されちゃったみたい。
ノリが悪いって思われてるんだろうな。
(まぁ2階の関係者席はみんな座ってるけど)
あ、そもそもライトきついだろうし向こうからこっちは見えてないか。
すっごいすっごいかっこいいけど、純粋に楽しめなくてごめんね。
なんか、なんかうまく言えないけど
パスなんて安易にもらうんじゃなかったな。
きゃー！！！
ぼんやりステージを見ていた私は歓声に驚いて圭人くんを見た。
私は下手側に座ってたんだけど、いつの間にか私の正面に立ってギターを弾いてる圭人くん。
「あ」
目が、合った…？
こっち見てる。
なにか言ってる。
「おおむし？ろうむし？労務士？」
ぜんっぜん何言ってるかわかんない！
でも何か私に向かって言ってるのは分かる。
いつものニコニコ笑顔を携えて、また上手に戻っていった。
「圭人どうしたんだろう。珍しいですね」
アンコール前、隣に座る女の子が硬い表情。
「圭人くんが？」
「ステージ上であんな風に笑うの、今まで見たことなかった」
「…そうなんですか？」
「視線的にこっちを向いてたけど、圭人は誰に向かってしゃべってたんだろう」
「さ、さあ？」
「あれじゃメンバーに怒られちゃうだろうな」
「え？！」
「なんていうか、Insomniaはクール系バンドとしてやってるから。あんな可愛い笑顔見せたり、特定のファンサービスっていうのはバンドの本質を損なうはずですよ」
女の子の口調が怖くて、さっきから私はずっと自分の膝を見てる。
「あなたのお名前を伺ってもいいですか？」
「…Aです」
「Aさん。『ホームシック』ってなんのことか分かります？」
「…」
「私は圭人がAさんに向かって伝えてたんだと思ったんですけどね、違うならいいんです」
「…」
「私、伸び盛りのバンドの邪魔だけは絶対に許せませんから」
ほーむしっく。
やっぱりアレは私にだったんだ。
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作者名：もぶ | 作成日時：2018年4月8日 15時
