DEAR. ページ35
大貴ってば変なとこ几帳面で変なとこ雑だから。
バッグの中、雑に転がってる…リングケースを見つけてしまった。
なんていうの？ベロア？ベロアより高級そうな生地のいかにもなやつ。
…中身は見てない。
それは勝手に見ちゃだめだと思って見つけた瞬間バッグの奥深くにしまったから。
私は大貴の質問に頷いた。
「ちゃんと、ムードのあるとこでって思ってたんだけど。あーあ、俺ほんとこーゆーのだめだね。隠し事できないんだよ」
分かるよ。
私が勝手に部屋に入って掃除した時に見つかっちゃまずいと思って持ち歩いてたんでしょ。
少しだけ落ち着いた呼吸、まとまった思考。
私は緩く首を振った。
「え？このことじゃないの？」
バッグを手繰り寄せた大貴の手には噂のリングケース。
「んんっん！…あのさ、突然なんだけど」
咳払いをして真面目な顔した大貴が私の目の前にいる。
ゆっくりゆーっくり開けられたリングケース。
シンプルだけどデザインが繊細で真ん中に大きなダイヤがついたリング。
「まだ、まだね、ちゃんとその…なんつーの？手続き？をすることは当分の間は無理なんだけど。俺の心境っていうか、俺の決意の塊を見て欲しくて」
多分、『決意が固まった』とかそういうことだと思うんだけど…
どうやら『塊』と『固まり』を間違えちゃってるね。
「これから先、俺はA以外無理だから。将来を約束させて欲しい」
もう泣かないって決めたのに…
大貴がそんなこと言うからまた溢れてきた。
嬉しい。
「大ちゃん」
「へ？」
「大ちゃん、」
不思議そうな顔をした。
「まって、やだ、聞かない」
「大ちゃん、聞いて欲しいの」
「無理。なにその大ちゃんって。やだ」
何から話せばいいのかな。
どうしたら伝わるのかな。
「さよならしたいの。友達に戻ろ？大ちゃん」
End
__________________
言わなくても分かると思いますが続きます。
2017.11.29
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作者名：もぶ | 作成日時：2016年11月22日 21時
