flavour ページ32
はれ？なんだ？甘い？
先にAが帰宅してる家に入るとなんとも言えない甘い匂い。
料理っぽくもないし、お菓子？
いやお菓子にしては甘すぎねーか？
そこで気づく俺。
あ、やべ、ハロウィン。
帰りの車に乗るまでは覚えてたのに！お菓子あったかな？ってポッケを探してもない。
しばらくがさごそしてるとドアが開いた。
「おかえりー、なにしてんの？」
「ただいま！いや、ちょっと」
「さがしもの？」
「そう！でもだいじょぶ！今見つかった！」
「早く手洗っておいでー」
「ほーい」
やばいやばいやばいやばい。
ハンドクリームしかねぇ。
あ、これ山田にもらったちょっと変わった甘い匂いのやつだからいけっかな？
…無理か。
手の中の泡がかなりモコついてる。
てか、お菓子あげないと何されるんだっけ？
リビングに行くとAはチーズをつまみにしゅわしゅわしたお酒を飲みながらテレビ見て笑ってる。
こういうのいいなー、かわいい。
「Aー」
「ん？ご飯は食べてきたよね？」
「うん軽く！」
「なんか食べる？」
「そのチーズちょーだい」
昔ながらの6個入のチーズ。
Aは新しいチーズの包装？をぺりぺりっと剥いて渡してくるんじゃなくて
食べかけのやつを俺の口に運んだ。
このちょっとしたやりとりが嬉しい。
なんか、付き合ってますーって感じが。
友達はさ、何年も付き合ってるとお互い色んな部分が適当になるから萎えるって言ってたけど
俺は何年も経った適当さも味だと思う。
やっぱり経過とともに関係性だって少しずつ変化してくもんでしょ？
俺たち始まりがあまりよろしくなかったから…Aは彼女らしい甘い雰囲気は元々なかったけど。
だからこそこうして一緒にいてくれて適度な雑さと適度な甘さのバランスっていうの？俺は好きなんだ。
いつか雑さに比重が傾いても俺はそれでいいと思う。
その時もきっと可愛いな、好きだなって思えるはずだから。
「あごめん、お菓子忘れてきちゃった」
俺の突然の一言にAは目を丸くした。
「え？私も持ってないけど」
「え？」
「え？」
「え？！」
すんすんって鼻を鳴らしながら嗅ぎ回る。
「やだ犬みたい」
Aがそう笑った瞬間にふんわり香った気がした。
「お風呂？」
「あ！そうだ、後輩ちゃんにもらった入浴剤だ！大貴も入っといで！」
「…とりっくおあとりーと」
「は？」
「…イタズラしてもいい？」
End
2017.11.01
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作者名：もぶ | 作成日時：2016年11月22日 21時
